飯場は親会社や現場の都合で移動する ことが多い。
トラックやマイクロバスで次の飯場へ。
わたしはトラックの荷台に乗りたくて、父にせがんだ。
姿が見えないように乗るのなら、と言われた。
家具の間で仰向けに寝た。
目前に広がる空と雲に包まれる。
何本もの電線が体をスキャンするように通り過ぎる。
もうすぐ到着というところで、トラックが揺れだした。
なにごとかと飛び起きた。
飯場への道はアスファルト舗装がされておらず、
雨でできた大穴がたくさん開いていた。
砂埃が舞い上がった。
着いた。
広い敷地がぐるりと仮囲いされていて
中にプレハブが2棟建っていた。
幼いわたしには仮囲いがやたらに高くそびえて見えた。
仮囲いの途切れただけの入り口が
まるで隔離された世界との境界のように感じた。
飯場は荒川の河口付近にあった。
風が強く、潮の香りがした。