医者に行ったあと、いつも診察の様子や診察室にあった器具などの事を話してくれるムスメ。
「ママ?大きくなったらお医者さんになれるかなー?」
そう嬉しそうに言うムスメに"普通に産んであげられなくてごめんね…"と心底辛くなる。なれると思っているムスメの笑顔に申し訳なくて泣いて謝りたい。
IQ62という知的障害、特別支援学校に通い、読み書き計算が困難で人と上手く話せず、今でも成人しても自活はできません。
そんな「障害者」が医師にはなれない。
現実を面と向かって言えるはずもない。なりたい夢を踏みにじるようなことはしたくない。かと言って、なれると本気で信じるようなわざとらしい嘘もつきたくない。
"Ich bin nicht dumm!"(私、バカじゃないもん!)
何かを上手く出来なかったり、表現できなくなると苛立ちながらこう言い、悲しそうな顔。ムスメなりにわかっているんだろうと思う。
「う〜ん、お医者さんになるには大学に入って、本をいっぱい読んで、作文もたくさん書いて、しっかり勉強をしなあかんかな〜…」
「そっかあ〜」
たまに言われたとき、なんと言ってかわせばいいのかわからない。