療育センターでは年1回、担当医師と『ゲシュプレッヒ(話し合い)』がありました。

 

2016年、春。

 

すでに5歳になっていたムスメの多動はセンターに通い始めた2歳半のときよりも落ち着き、頻繁に口にオモチャや石などを入れる行為も少なくなっていました。それでも集団行動やコミュニケーションの困難など、年齢があがってもあまり変わらないものをありました。

 

前もって渡されたそういった発達状況についての問診用紙と合わせ、医師の意見では『自閉症スペクトラム障害』の可能性があるとのこと

 

自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。さらに知的障害や言語障害を伴う場合と伴わない場合があります。また、これらの症状は発達段階、年齢や環境などによって大きく変化するといわれています。

 

自閉症スペクトラム障害と一言で言っても、生活に支障をきたすほど症状が強い方から、症状が軽度で日常生活にほとんど支障なく暮らせる方まで様々です。症状の強弱や、知的障害を伴う・伴わないなどによって十人十色の理解やサポートが必要な障害です。

 

(LITALICO(りたりこ)発達ナビより抜粋) 

一般的に知られている自閉症とは違う。でもこれならムスメの”症状”にぴったりと当てはまる。もしかしなくてもムスメは『自閉症スペクトラム障害』なのではと確信したほどです。

 

そこで医師の提案で、

 

Autism Diagnostic Observation Schedule (ADOS)  ー 自閉症診断面接検査

 

を受けることになりました。2人の心理学者がムスメを診察、その様子をビデオで撮影。約1時間ぐらい。

リストの順番が長く、話し合いから4ヶ月ほど経った9月中旬で、ちょうど療育幼稚園に編入して間もない頃でした。

 

オットーによれば、いくつかの写真についての質問、△や◯の積み木を同じ形の穴に合わせる、など。でも30分もすれば『ママどこ?ママのところに行くー』と言って、席を立ってドアから出ていこうとしていたらしいです。(私も療育センターに同行していましたが、私がいれば検査より”ママ”に集中してまうことが多いので待合室で待っていました。)

 

診断面接検査には親の問診もあり、後日オットーと私は再び療育センター本館を訪ねました。検査をした心理学者の方からみっちり1時間はムスメの生活史などの質問。覚えている質問は、生活に支障をきたすような行動があるか、自身しかわからないような造語の有無、など。単なる『はい』『いいえ』だけではなく、どれくらい質問の行動が強いかをこたえます。

 

1ヶ月後、再々訪問した療育センターで聞いた結果は…

 

ムスメは自閉症に該当する点がいくつかありました。しかしながらも、人と目を合わせられる、コミュニケーションができている、などから考えても自閉症スペクトラム』ではない。

 

それならムスメは何か。

 

Retardiert

 

英語では『Retard(リタード、”のろま”な馬鹿)』、今は差別用語になっている『知恵遅れ』。

 

心理学者は『retardiert』でムスメを表現しました。驚かないでください。あくまでも専門的な意味での『発育遅延』として使用され、英語のような悪意は全くありません。

 

よく自閉症と併合している『ADHD(注意欠陥多動性障害)』の疑いも、ただの疑いに終わりました。心理学者曰く、ADHDならば診断面接検査のときすぐにわかるそうです。

 

Entwicklungsverzögerung (発達遅延) 

この長い1つの単語がムスメに下された診断名。

 

『Entwicklung(エントヴィックルング)』は”成長、発達”、『Verzögerung』は”遅延、延期、停滞”。

 

実はオットーと私、以前からムスメは『自閉症スペクトラム』だと思っていました。すんなりとその事実を受け入れる準備はとうにありました。ムスメの育児の方針もはっきりとさせ、正面から向き合えると喜んでいたほどです。

 

自閉症に該当することがいくつかあるのに、と正直言えばその時はいささか診断に納得がいきませんでした。でも診断名をもらい、落ち着いて考えてみると今では思うほどの症状はなく、6歳になった今ではほぼ『普通』。多動もまだまだキツイときもありますが、お出かけでも一緒に並んで歩けるなど良くなってはいます。

 

自閉症かもしれないと疑い続けて4年、ようやく苦しかった心が楽になりました。3歳〜4歳頃に受けていたらどうなっていたのだろう?

 

多分というか100%、その当時ではムスメの状態ではとても診断ができなかったでしょう。結果的には5歳頃に診断をするようになっていたと思います。

 

私の経験と調べたことから、こういった診断検査は子供の機嫌次第で診断結果が良くも悪くも変わることもよくあります。それにはっきりした自閉症やADHDの症状がなく、発達の障害のムスメのような場合は、余程顕著な症状がない限り早期診断はオススメできないです。何とかしたくて辛い気持ちはわかりますが、年齢があがって、根気よくセラピーや発達を促すことを継続することで改善することがあります。

 

だから検査を受けた5歳頃がベストだと今は思っています