9月の終わり、秋の夜長。
僕は彼女の部屋で懐かしいものを見つけた。
会社のロッカーを整理していて、見つけたものらしかった。
しばらくは使わないだろうからと、持って帰ってきたらしい。
5月、彼女はホワイトボードを片手に仕事をしていたときがあった。
なぜか。
風邪をひき、そのまま喉をつぶしてしまったからだ。
少し前に筆談ホステスと話題になった方がいたが、
そのときの彼女は筆談品証だった。
僕はこんな冗談を言っているが、本人は相当悔しそうだった。
4か月経った今も、そのときのことを思い出したのか、
苦虫を噛んだような顔をしている。
なんでも、品質保証の仕事は「対話」なのだそうだ。
それが満足にできなかった約2週間、
彼女は自分の仕事ができず、ちょっと不機嫌だった。
品質保証は、プロジェクトの成果物を見て、
世に出す承認をするのがその仕事である。
その過程で、できていないことは「できていない」と、
プロジェクトに指摘する。
ここまでは、エンジニアの僕も普通にわかる。
でも、僕が新鮮に思ったのは、彼女の一言だった。
「必ず『なぜできなかったか?』は聞いて、
そこから結構話すんだよね。」
その答えには、リーダの手が回らないとか、
管理の仕方が悪いとか、プロジェクトの問題が潜んでいることが多い。
その部分の解決をサポートするのが、彼女の思う『品質保証』なのだそうだ。
9月の終わり、秋の夜長。
彼女はそれまで飲んでいた温かいコーヒーをテーブルに置く。
そして、ある一時彼女を助けたそのホワイトボードを棚にそっとしまった。
つづく
