泣き止まない夜に、泣きたかったのは私
今ならわかるんだよな
あの夜
いちばん張りつめていたのは
娘じゃなくて私だった
誰かに「大丈夫だよ」って言ってほしかったのに
そんな言葉を受け取る余裕さえなかった
玄関がガチャリと開いた
――なんで今なん?
やっと寝かしつけたのに
このあとの“自由時間”を楽しみに
朝から外遊びに連れて行って
午後もできるだけ相手して
お風呂もゆっくり入れず
ご飯もさっさと済ませて
わざと、この時間狙って帰ってきてるんやろう
……なんて、ほんとに思ってたんだよね
不機嫌むき出しで
「おかえりー
もう、〇〇(娘)起きちゃったよ」
って、嫌味っぽく言ったこと何度もある
夫からすればさ
「帰ってきたら悪いの?迷惑なの?」って思うよね
それも、今ならわかる
でもあのときの私は
頼れる人もいなくて
ずっと娘と二人きり
孤独だったんだ
それに
専業主婦は“楽でいいよね”って思われるのが
たまらなく嫌で
忙しいアピールばっかしてた
「よくやってくれてるね」って
言ってほしかった
「おかげで仕事に集中できるよ」って
言ってほしかった
ほんとは
ただそれだけでよかったのにな
今なら言えるよ
あの頃の私に
笑ってなくてもよかったんだよ
泣いてても
抱きしめてあげれば、それだけで充分だった
あの頃は
ほんとに必死だったね
誰にも頼らないことが“強さ”だと思ってた
「母親なんだから」って、気を張って
でも本当は
ただ安心したかっただけなんだよね
頑張らなくてもよかったけど
頑張ることでしか
自分の存在を感じられなかったんだ
そのくらい、孤独の中で立ってたんだよね
いまは、あの頃よりずっと
ゆるんだ顔で笑えてる
泣きながらでも、ちゃんと生きてる
あのときの私を、優しくむかえてあげたいなー