朝、ふと気づくと夫が掃除を始めていた。
トイレ、浴室、脱衣所の換気扇。
ぎっしり詰まったホコリを、ひとつひとつ丁寧に取り除いていく。
以前の彼なら、絶対に触ろうともしなかった場所。
それが、今日は黙って、当たり前みたいな顔で。
納戸も、長い間ごちゃごちゃだったのに、
収納ボックスを使って、見違えるように整えてくれた。
そしてふと見ると、
掃除機のヘッドに絡まった髪の毛まで、きれいに取ってくれていた
私がずっと後回しにしていたところ。
できないまま、気になりながら見ないふりをしていたところ。
そんなところを、さりげなく埋めてくれる姿に、
胸がキュンとなった。
作業の合間に、ハグしたり
軽く手を重ねられたり、
スキンシップがうれしくて、顔がほころんだ。
並んで作業して、
少し疲れて、コーヒー飲んで
顔を見合わせて笑って。
そんな時間が、
まるで小さなご褒美みたいだった。
「ああ、私、全部ひとりで頑張らなくてもいいんだ」
「頼っていいんだ」
そんなふうに、心の奥がふわっとほどけていった。
家の中もきれいになった
空気も軽くなった。
そして何より、
心の中に、やわらかい風が吹いた。
今日は、そんな日だった。