コロナウイルスではありませんが、記憶しておく必要がある報告でしょう。

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7954815/
Novel infectious particles generated by expression of the vesicular stomatitis virus glycoprotein from a self-replicating RNA
自己複製RNAから水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質を発現させることにより生成された新しい感染性粒子
M M Rolls 1, P Webster, N H Balba, J K Rose
PMID: 7954815 DOI: 10.1016/0092-8674(94)90258-5
 

Abstract
Self-propagating infectious particles were produced in animal cells transfected with an RNA replicon encoding a single viral structural protein, the vesicular stomatitis virus glycoprotein (VSV-G). 
The replicon is derived from an alphavirus, Semliki Forest virus (SFV), and encodes the SFV RNA replicase, but none of the SFV structural proteins. 

自己増殖性の感染性粒子は、単一のウイルス構造タンパク質である水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質 (VSV-G) をコードする RNA レプリコンを導入した動物細胞で生成されました。
レプリコンはアルファウイルスであるセムリキ森林ウイルス (SFV) に由来し、SFV RNA レプリカーゼをコードしますが、SFV 構造タンパク質はコードしません。

After transfection of the replicon into tissue culture cells, expression of G protein spread from small foci throughout the culture. 
Supernatants from the cells contained infectious, virus-like particles that could be passaged and were neutralized by anti-VSV serum. 
The majority of the infectious particles were smaller and less dense than either VSV or SFV. 

レプリコンを組織培養細胞に導入した後、G タンパク質の発現が小さな点から培養全体に広がりました。<-----(!)
細胞の上清には、継代可能で抗 VSV 血清によって中和される感染性のウイルス様粒子が含まれていました。
感染性粒子の大部分は、VSV または SFV よりも小さく、密度が低かったです。

Characterization by electron microscopy showed membrane-enveloped vesicles that contained the VSV-G protein. 
Infectious particles were apparently generated by budding of vesicles containing VSV-G protein and the RNA replicon. 
These experiments reveal that an enveloped infectious agent can be much simpler than previously thought.

電子顕微鏡による特性評価により、VSV-G タンパク質を含む膜エンベロープ小胞が明らかになりました。

感染性粒子は、VSV-G タンパク質と RNA レプリコンを含む小胞の出芽によって生成されたようです。

これらの実験により、エンベロープ感染因子はこれまで考えられていたよりもはるかに単純である可能性があることが明らかになりました。

 

==== RNAレプリコンは植物にもあって、

次論文で水平伝搬するレプリコンの存在が示唆されています。

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第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
DOI https://doi.org/10.14841/jspp.2006.0.773.0
植物や菌類に広く分布する高分子プラスミド様2本鎖RNA(Endornavirus)
*福原敏行, 青木菜々子, 保立峻介, 結城千洋, 山本奈津子, 森山裕充

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藻類から高等植物にわたる広い範囲の病徴を示さない植物体から、約1-15kbpの様々なサイズの直鎖状2本鎖RNAが検出されることが報告されている。

我々は、イネより検出される約14kbpの高分子2本鎖RNAについて、分子構造、遺伝様式を中心に研究してきた。
イネ2本鎖RNAは、宿主に病徴を示さず、自己複製するレプリコンで、花粉や卵を介した垂直伝播のみをおこなうといったプラスミド様の性質を示す。
しかしながら、イネ2本鎖RNAがコードするRNA依存型RNA合成酵素の保存モチーフが1本鎖RNAウイルスのそれと相同性を持ことから、イネ2本鎖RNAは、Endoviridae科のEndornavirus属に分類される新規なウイルスであることを提唱した。
 
本研究では、高分子2本鎖RNAレプリコン(Endornavirus)の起源や進化を考察するため、オオムギ、インゲンマメ、ヒョウタン等の植物や、紫紋羽病菌等の菌類から、2本鎖RNAを単離、部分塩基配列を決定し、分子系統解析を行った。
 
その結果、高分子2本鎖RNAレプリコンは、高等植物に広く分布し、かつては水平感染(伝播)した可能性が示唆された。
また、植物病原菌からもEndornavirus様の高分子2本鎖RNAが検出されたことから、菌類を介してプラスミド様2本鎖RNAが水平伝播した可能性が示唆された。