「あ、こんにちは、天使と悪魔です。」
「えっ?」
「あ、嫌だから、天使と悪魔です。」
「いや、あの、」
「だからぁ、きいてます人の話?天使と悪魔で、ほら、よくあるでしょ、やっべ、どうしよ、これ、いけないことだよね、でもチャンスだよね、みたいなこと、その時でてくるあれです。」
「うん、わかるけど、」
「じゃぁさっそく。」
「いやちょっとまって、なんでその、」
「あ、今日から担当になったんで。神阿久真さんですよね。」
「そうですけど・・」
「あぁ、こんな感じに来ると思ってなかった?そうですよね、普通心の声的な、ちょっとその時だけ浮かんでは消えるみたいな・・。」
「えぇ、まぁ・・。」
「そんな安いもんじゃないんですよ、本当は。」
「あ、はぁ・・。」
「て言うかあなた幸運なんだからね。無料でアドバイスがもらえて人生の役に立つ、こんなおいしいはなしないよ?」
「いや、なんか悪徳勧誘みたいに聴こえるんですが・・。」
「悪魔ですから。」
「あ、そもそもそこなんですが、天使さんは?」
「天使ですが何か?」
「えっ、いやいや、おかしいでしょ、悪魔さんですよね。」
「はい。」
「天使さんは?」
「私ですが?」
「えっ、悪魔、」
「です。」
「天使、」
「です。」
「悪魔で天使なんですか?」
「そうですが何か?」
「いや、おかしいですよね、悪魔と天使って相容れないものなんじゃないんですか?」
「そうですよ?」
「じゃあ普通別々にくるんじゃ・・。」
「あんたね、今のご時勢わかってる?人件費削減で省エネで省スペースで、そうそう1人に2人もつけられるわけないじゃない。」
「いやでも、いろいろ無理があるというか・・」
「そこで私の出番ですよ。私ね、人格が2つあってですね、1人でも2人分働けるわけですよ。そりゃぁもう重宝されますよ。」
「じゃ、じゃぁ、何かあると、1人で2役を?」
「そう、もう女優張りにね。」
「そこ、なんか嘘くさくなるからしちゃいけないたとえじゃないんですか?演技ってことですよね。」
「失礼な、演技じゃないって、2人いるんだよ。」
「じゃあ今しゃべってるのは?」
「えっ?私。」
「私ってどっちの。」
「私は私だけど。」
「いや、天使とか悪魔とか。」
「なに?常にオンじゃなきゃダメ?下界に降りてきたら常にオフはないの?私にプライベートはないわけ?」
「いや、だって、今話してるときは仕事なんじゃ。」
「何でもビジネスライクなんだ・・わかってたけどね・・寂しいな。仲良くやろうと思ってたんだけどな。」
「あ、いや、すみません・・。じゃ、じゃあ3人いるってことでいいんですか?」
「その方が気が済むなら・・。」
「気が・・あ、はい、そういうことにします。」
「じゃあ、早速いこうか。で、今何しようとしてたの?」
「何って・・おじいさんがですね。重い荷物を持ってたんで助けようかと思ったんですが、行く方向逆みたいだし、それにかえって迷惑になるかなぁって・・。」
「そんなん気にするなよ、じいさんだろ?近いうちお迎えよこすからさ、ほっとけよ。」
「えっ、そんな、さすがにそれは・・。」
「ダメ、そんなことじゃダメ、親切は勇気を持ってやらないと、君だっていつか年をとるんだから。みんな助けあいだと思うよ。」
「ご、ごめんなさい、やっぱりなんか一人に言われると、気持ちが混乱するって言うか見てて気持ち悪いって言うか・・。」
「あっ、お前今、全2重人格対応者敵にまわしたな。」
「いや、別にその、そういうわけじゃ。」
「じゃあなんでそんなひどいいいかたするの?そんないいかたしたらみんな傷つく。」
「えっ、あの、天使と悪魔続いてるんですか?これ?」
「続いてるとかじゃなくて、これ、人格だし、お前人格否定してるんだからな。」
「いや、あの、そんなつもりはなくて、ちょっと言い過ぎましたけど、混乱してるのは事実で。」
「あなたは自分を否定されて、ちょっと言い過ぎで許せるんですか?もっと相手の気持ちにならないとダメです。」
「ごめんなさい・・あの、どうすれば。」
「そうだな・・金かな。」
「えっお金ですか?」
「お金なんてそんな・・ちょっと気持ちが安らぐように、甘いものとか・・。」
「あの、2人とも、たかりとかじゃないですよね。」
「うわぁさいてーだなお前。」
「ひどいっ。」
「あ、あの、ごめんなさい。でも、すみません、ちょっと混乱するので、もう一度私さんと話させてもらってもいいですか?」
「何?」
「えっ、私さん?」
「そうだけど何?これプライベートだからボランティアなんだけど。」
「あぁ、すみません、もう一度聞きますけど、これお金とかかからないですよね。」
「かからないですよ。」
「えっと、2人になんか要求を受けてしまって・・。」
「うーん、あなた何かしたんじゃなくて?別に対価は払わなくてもいいけど、うまくやっていきたいのならそれなりにね。」
「あ、あの、これ辞退とかでき、」
「できるできないじゃなくて、幸運だって。」
「できないんですね。」
「するな!」
「できないんだ・・。」
「それにそんな簡単にチェンジされちゃこっちの評価にも響くんですけど?それとも何?自分は関係ないからOK?」
「いや、そういうつもりは・・。」
「ほんと最近の消費者は何でも文句言えば済まされると思って。」
「すみません。」
「で、どうするの?選択は?私戻っていい?」
「あ、いや、その、悪魔で天使で私さんに話しかけられてるうちに、おじいさんどこか行っちゃったんで・・。」
「はぁ?そういうこと早く言いなさいよ、完全に骨折り損じゃない、もうそんなだから私がつく羽目になるのよ。これからビシバシ行くから。覚悟しなさいよ。」
「は、はぁ・・」
「しゃきっとしなさい!」
「はいっ。」
「よし!じゃあ、とりあえず家に帰ろうか、今後の話しもあるし。」
「えっ、あの用事が・・。」
「なんなの?早く済ませなさいよ、何でこんなところでうろちょろしてんのよ。」
「あ、いやその・・・ごめんなさい。」
「はい、じゃあ、用事済ます、終わったら家帰る、以上。」
「・・・・・はい、」
「で、どっち、都会って道わかんなくて。」
end