博士と女子高生11 ―「命の重さ。」― | オレンジネコのブログ

オレンジネコのブログ

 
 
すみません開始から1年以上たっても何がなんやら(笑)
ここのコメントもようやく少しお手入れ。
内容は統一感なく色々?やってます。
こんな感じですがたまに役に立つかもしれないことも書いたりなので、
もしよろしければお暇なときにでもご覧ください。



「一寸の虫にも五分の魂。」

「何の話ですか?」

「小さな虫にも魂はちゃんとあるよって話なんだけど。」

「うーん、命の話ですか?私、そういう話好きじゃないんですけど。」

「なんで?」

「なんか重いっていうか、無駄に考えたくないっていうか。」

「なるほどね。なんで重いって感じるの?」

「うーん、軽々しくふれちゃいけないというか・・。タブー的な?」

「そう思うんだね、君は。僕は逆に普段から考えるべき問題だと思うけどね。」

「そんなこと考えてたら疲れませんか?」

「疲れるかは別として、どんな形でも考えたことがないと、それはどんどん空虚になって軽いものになっていく気がするんだよね。」

「軽い・・ですか。」

「別に無理に難しい話にする必要はないんだ。別に人の死ぬ話でもいい。なんにしても、生死に関わることって意識しているべきことじゃないかなって思うんだよね。」

「命は重いからですか?」

「命の重さって、よく言うけど、世の中ではその重さに違いが出ているよね。」

「違いですか?」

「よく、子供が亡くなったりすると、こんなに小さい子がかわいそうに、とか、これから未来のある子供を・・とかそういう言い方をするよね。」

「あぁ、そういえばしますね。」

「かと思えば、お年寄りが殺されると、何もこんな年の人を手にかけなくても、とか、少し不謹慎だけど、そういう見方ってされていないかな?」

「うーん、確かに、そういう雰囲気はありますね。」

「働き盛りの人もそうだし、妊婦さんもそうだし、みんな何かと理由をつけては、そう言うことをいう。けど、変じゃないかな?これって。小さいから高齢だから働き盛りだから妊娠しているから・・そんな理由をつけて命の重さを問うけど、じゃあ何と比較しているのかな・・」

「それ以外の人達ですか・・?」

「そうだね。これって表現としては明らかに命の重さに差をつけているよね。」

「けど、その対象がこれだけ多いと、実際には差なんかないんじゃないですか?」

「そうだね、恐らくはそうだと思う。世の中には死刑に反対な人もいるね。これは犯罪を犯した者であっても、その命を奪うことには反対だって言うことだと思うけど、つまりそれは例え相手が犯罪者でも同様に命の重さを感じているってことだと思う。」

「なんかちょっと違和感はありますけど、そういうことなんでしょうね・・。でも、だとしたら何の問題もないんじゃないですか?」

「そう、一見そう見えるんだよね。けどね、じゃあなんで重さに差をつける表現があるんだろう。人類みな同等の命の重さを持っているんだとしたら、それは必要ないはずだよね。」

「そうだけど、でも、やっぱりそうしちゃうんじゃないですか?」

「そうだね。そうしちゃうんだろうね・・。実際、命の重さに差なんてないって思っていても、それは立場や状況で常に変わる見方。例えば、さっきの死刑囚の話、犯罪の被害者からすればどうだろう・・。例えば、助かる人が限られていたとして、誰を優先的に助けるのか・・。」

「うーん。でもだとするとやっぱり考えてもしかたのないことなんじゃないですか?」

「そうかな?例えば死刑の話だけど、これに反対する人達って恐らく命について色々考えて反対している人が多いと思うけど、なかなか普段の生活では、犯罪者の命の問題まで辿り着かないよね。さっきの命の重さの違いの話を軸に考えてしまえば、流されて当然の問題だから。」

「確かに悪い人が死んでも自業自得と思ってそれほど気にとめない感じはしますね。」

「怖いのはね、命のことを考えもしないで過ごして、その重さの違いだけを刷り込まれてしまうことだと思うんだ。」

「どういうことですか?」

「子供はかわいそう・・犯罪者はかわいそうじゃない・・そういう単純化だけが頭の中で起こると、命が記号化してきてしまうと思うんだ。例えば、ホームレス狩りなんてこの重さの違いを歪んで解釈した結果じゃないかと思うんだ。」

「歪んで?」

「自分たちの過ごす世界に、働きもしないゴミのような大人がいる。だから虫けらのように扱ってもいいだろう。」

「ちょっ、それって言いかた酷くないですか?」

「ごめん、わざと酷い言い方をした。彼らが本当にそうだと言うつもりはないよ。けどね、働かない=無価値として、命の重さを軽く見積もる理由にしちゃいないかなって話なんだ。誰かが特別なら誰かはつまらない存在。じゃあ誰をつまらない存在にするのか?役に立たないもの、するべきことをしないもの。そうやって分別して、傷つけてもいい命を見つけ出す。」

「・・・。」

「彼らは人とやり方が違うだけで、生きているんだ。恐らくは普通に働いている人よりも過酷な状況と隣りあわせで。けど、彼らがどんな人生を送ってきて、どんなことに笑い、どんなことに幸せを感じていたかなんて誰も想像しやしない。ただ、迷惑な人とかって思って排除したいとどこかで思ってる。それが無意識のうちに命の軽視の理由付けになる。」

「確かに、ちょっと近くにいたらいやだなって思ったりはします・・。でもそれとこれとは・・。」

「そう。そう思えるなら、たぶん軽くは扱わないんだと思うよ。でも関わりたくないから、彼らが路上に寝ていても心配しようとはしない。たぶんそんな感じじゃないかな。」

「・・・はい。」

「ごめん、別に君を責めているわけじゃないんだよ、僕だって同じだ。ただ、それに対してこうして罪悪感を感じているってことはある程度必要なことなんだよ。」

「だからその罪悪感を感じる為に命のことも考えておくべきってことですか・・?」

「うーん、ちょっと違うかな、罪悪感を感じること自体が必要なんじゃなくて、相手のことを想像できることが必要ってことかな。命のことを考えるってその重さってことだけじゃなく、その背景が大事なんだ。その人にも生活があり、感情がある。それを知っていれば、ただの表面的な情報だけに惑わされずに、きちんと考えが及ぶようになると思うんだ。」

「相手を知るってことですか?」

「そう。何も考えずにテレビの物言いだけをとらえ、それを歪んで理解していれば、子供の命の方が大切だ、年寄りは早くしねばいいと思ったり、自分たちは弱者だから優先しろというふうに自分たちの都合のいい意見だけを通そうとするかもしれない、犯罪者と被害者の関係になれば、相手をうらんで死んで欲しいと思っても当然だ。」

「・・・。」

「けどね、相手を知り命のことを知れば、安易にそう流されなくなると思う。仮に犯罪者に死刑を望むのであっても、そこに感情だけではない考えが生まれるようになる。結果は変わらないとしても、相手の命を奪うことの意味を考えることで、はたしてそれが必要だったのかを改めて考えることになる。人によっては、相手にしを求めることを無意味に感じ相手にも考えることをして欲しいと望むかもしれない。」

「感情に流されないってことですね。」

「そう・・。誰だって自分を中心に物事を見てしまうからね。被害者と犯罪者の話でいえば結果として相手のことを今一度考えることが、自分の身を怒りや憎しみでこがすことから救ってくれるかもしれない。」

「命は重い。だからこそ、感情に流されれば判断を誤る。例えば災害時に我先にと助かろうとするものが多ければ、結果として混乱をきたし、死者を増やすことになる。けど、命を考えることで、相手の状態をも把握しようとする思考が働けば、混乱は最小限にもなるし、弱者を優先したりすることで、少しでも多くの人達を助けることにもつながる。」

「確かにそうですね・・みんなが自分の命を守ろうとパニックになったら、下手したらみんな死んじゃう。」

「それにね、その後の世界も変わってくると思うんだ。もしかしたら、老人を助けたことで、その知恵を生かし、みんなでその後の時間を乗り越えられるかもしれない。子供達を守ったことで、未来への展望が開けるかもしれない。我先にと力の強いものだけが生き残った世界には老人の知恵も子供が作る未来もなく、奪い合いだけが続いてしまうかも・・・。」

「そう考えると怖いですね・・誰がどんな役に立ってくれるかわからない・・やっぱりみんなで生き残らないと・・。」

「なんかすっかり話がそれてしまったね。」

「けど、ちょっと命について考える意味はわかったかもです。まぁ重くなりがちなんであんまり人とはできない話ですが・・。」

「まぁ、それでもいいと思うよ。」

「ところで、博士は死刑に反対なんですか?」

「うーん、散々命の重さの話をしてなんだけど、別に特別反対はしていないよ。残念な話だけど、たぶん死刑があることで、どれだけ人を殺しても捕まれば自分は死なないという保障はなくなるからね。ただ、死刑にすればいいとも思っていない。死を望んで人を殺す人もなかにはいるからね。」

「つまり、犯罪者の命を考えてその背景を知れってことですね?」

「そうだね。その人が何を考えてそれをしたのか、何があったのか。それによって与える刑罰も変わってくると思うんだ。軽いとか重いとかじゃなくて、必要な罰と更生を与える。それが本来の刑罰の意味じゃないのかな?それに、感情に任せて相手から奪いすぎれば、結果奪った人間に傷が残る。被害者が死んだのが子供だから刑を重くするとかも感情面に流されてしまえば、意味が変わってしまう。」

「さっきの命の話にもつながりますね・・。結局命の重さに差をつけてそれを印象付けちゃう・・・。もし考えるなら、子供だからじゃなくて、弱さに付け込んだ行為だから、とかそういうことですよね?」

「そう。カテゴリーじゃなくて理由だね。」

「誰がじゃなく何故・・難しいけど大切なことですね。」


end