武満徹さんの最後の作品「family tree(系図)」の演奏を聴いていたら、谷川俊太郎さんの詩を演奏内で朗読する、美しい少女に出会った。
 遠野凪子さんという女優さんで、当時は15歳ぐらいの方だった。武満さんは、この作品で朗読するのは十代の少女、とイメージして作った作品だった。その後、遠野さんの他に、別の女性たちが朗読した演奏も、ネットで公開されている。そのなかでも、遠野さんの朗読がいい。

 少女期に誰しもが持ち合わせていた、樹木の若葉のような、透明な光を感じた。

 そんな思いに安らいでいると、中国農村部の女性の動画が流れてきた。初めて観る動画だった。祖父母に育てられたその女性は、リー・ズーチーさん。春馬さんと同じ、1990年に生まれた人だった。

 私の憧れた祖父母のように、何でもできる。若いのに、懐かしい人。美的感覚に優れており、動画投稿を始めた2018年当時は、すべて自分ひとりで動画制作していたという。

 お婆さんや動物たち、春夏秋冬の暮らしが、美しい自然と食生活を中心に投稿されている。

 この動画を2018年に観ていた人たちは十万人、翌年には100万人、翌々年には1000万人を越えた。そうすると、彼女を利用しようとする人たちが出てくる。現在、トラブルに巻き込まれているようだ。

 そうなる前に、力になる人がいてほしかった。これほどの才能が潰されることがないように祈るしかない。

 春馬さんが出会っていたら、きっと憧れたに違いない女性だと思った。