一人で舞台に立っていた時は、

なんて自由だったのだろう。

全部自分の時間。





でも今回、

確かに自分の時間は少なかったけど、

集中できていたかもしれない。

ないものはないし、

ある中でやるしかない。




もちろん、

久しぶりの舞台なのでね、

ぺっぺっとできちゃうなんていう自信はなかったので、

仕事は無理だな。

と、辞めた。




娘の前で、

フヌケた態度を見せるわけにはいかないのである。





とにかく私らが、

稽古場でも家でも、

どんなふうに舞台に取り組んでいるか、

見てもらえるチャンスなのでね。




最初、

つたない台詞を小さな声でつぶやいていたり、

要求されることに反応できず固まってしまったり、

どんどん進んでいく振り付けに立ち尽くす娘を横目に、

帰ってくると、

「大丈夫?」と声をかけたりしてきたが、

「大丈夫」と答えるばかり。





他の子役ちゃん達のお母さんは、

稽古場には居ないわけだしね、

極力娘には接触しない。

劇場では、

私の楽屋には気軽に来てはいけない。






劇団員は厳しい態度で指導しても、

かげでは「小夏はしっかりしてる。頑張ってるよ」

と、

励ましてくれた。私を。




そのうち、

いっぱいいっぱいになった娘は

「振りがわからない。教えて。」

と私を頼ったりもしたが、

出演者達と仲良くなってくると、

ダンスリーダーのお姉さんたちや、

子供枠の先輩達に教えてもらいながら、

振りを覚えていく。




私はほとんど娘を放置したまま、

遠くからひっそりと見ていた。





そのうち台詞も、

こんなふうにしてみようと思うの。

と、披露する。





本番なんかは、

言い回しや動きなんかも毎回違う。

それは図らずもなのかどうかはわからないのだけど。




笑いが取れた。

なんて一丁前なことまで言いだす始末だ。





なんの訓練もない娘には、

舞台上で生きるだとかそんなことは無理だったと思うけど、

芝居は楽しそうだった。




皆さんからは、

最初顔がこわばっていて心配だった。

最後にやっと笑顔を見られた。

という感想をたくさんいただいた。





本当に娘の初舞台を見届けるために、

応援してくださっていたんだな。

と、

胸が熱くなる。





たくさんのお花やプレゼント、

応援の言葉、

ありがとうございました。



 

娘はいまだに平和な星の話ばかり。

まだ平和な星の中にいるようです。

今のところ次の舞台を夢見ているようです。






舞台に立ちたいと言われた時は、

困ったなと思った反面、

なぜか嬉しかった。




私たちが導かないように黙ってそっと見守ろう。




本当にあたたかく素敵な作品だった。

そしてこれまた、

あたたかく素敵なカンパニーで、

娘の初舞台がこの作品で良かった。







そうだ。
さようなら。
9歳の小夏。
今日も雨。
あなたが生まれた日も雨だったらしいよ。