託生が子供たちを連れて、実家に帰ってしまった。
葉山の家に電話をしたが誰も出ない。
向こうは午前10時頃、お義母さんは買い物にでも出かけているのか?
それに、託生はまだ空の上か?
確かめようにも、携帯を置いていってしまったので、GPSで居場所確認もできない。
そもそもどうして急にこんな行動に出たのか、全く分からない。
『実家に帰らせていただきます』
たった一行のこのメッセージに、託生の怒りがひしひしと伝わってくる。
普段の託生は、こういう伝言を残すときは、仕事お疲れさま、とか、すぐ戻るからゆっくり休んでてね、とか、オレを気遣う一言があるのに・・・。
『実家に帰らせていただきます』
用件だけを伝える素っ気ない一言に、託生が怒っているということが分かってしまう。
しかし・・・、本当に心当たりがない。
ここ最近仕事ばかりで家族との時間を取れなかったから?
・・・それが原因だとは考えにくい。
託生はオレの仕事に理解をしてくれているはずだし、この忙しさがずっと続くことはないと話してある。
託生は、「休みをたくさん取ったから、仕方ないよね」と笑っていたんだ。
オレの仕事じゃないとすると、じゃあ原因はなんだ?
葉山の家で何かあって、急に帰ることにした?
それなら、こんな風に携帯を置いて、黙って出ていくはずないよな・・・。
「あ~、さっぱり分からん!」
分からないが、なにか誤解をしているのなら、すぐに迎えに行って連れ戻さなければ・・・。
「・・・島岡、すぐにプライベートジェットを手配してくれ。・・・行き先か?日本だ。・・・なに?親父が使ってる?・・・わかったよ、じゃあ、明日の一番早い便を手配してくれ。・・・仕事?そんなのはお前に任せる。オレは明日から日本出張だ!」
なんだか文句を言っていたが構うものか。
仕事は一段落ついたし、今までの激務を考えたら、2~3日休みを取るのは当然の権利だ。