お風呂はいいとして、人の身体のマッサージなんて、ぼくはしたことがない。
どうしようかなぁ。
「ねぇ、真行寺くん、ちょっとマッサージさせてもらえる?」
「ええ!俺ですか?」
「そのまま座っててくれればいいから」
ソファに座る真行寺の後ろに回って、両肩を触ってみる。
「どの辺が凝ってるの?」
押してみても、筋肉なのか懲りなのか判別不能。
「固いのが凝りだろ?」
「葉山さん、もっと強く押しても大丈夫です」
「そう?」
結構力がいるな。
・・・あ、良いこと思いついた。
「ちょっと三洲くんも触ってみてよ。ここ凝ってる?」
「どれ・・・。真行寺、肩ガチガチじゃないか。葉山、遠慮せずもっと強く押した方がいいだろ」
「・・・イタタタ。でも、キモチいいっす」
力任せにグイグイ押してるだけのようにも見えるけど、一応マッサージと言っていいんだろうか。
練習するついでに真行寺くんの夢を叶えてあげようと思ったんだけど・・・。
涙目になってるのは、感動してるというより、痛いから?
ちょっと想像してたのと違うなぁ。
「真行寺くん、うつぶせになってみて。背中と腰もマッサージするから」
「背中と腰もですか!?」
「そうだな、こんなに凝ってるなら、全身ほぐした方がいいぞ」
せっかく三洲がやる気になっているのだから、もっと真行寺の希望を叶えてあげたい。
でも、大きめのソファとはいえ、真行寺が横になるには狭いかなぁ。
「ちょっと待ってて、マット用意するから」
お手伝いさんに頼んでマットを持ってきてもらって、床に敷いてその上に真行寺を寝かせる。
まずはぼくがやったほうがいいのかな。
「真行寺くん、上に乗るよ。重かったら言ってね」
真行寺の腰をまたぐように座ろうとすると、慌てて制止された。
「ちょっと待ってください!葉山さんにそんなことさせたと知られたら、崎先輩にどんな目に遭わされるか・・・」
「ギイ?大丈夫だよ」
「葉山、大丈夫じゃないと思うぞ。あの嫉妬深い男が、葉山が他の男の身体をベタベタ触ったと知ったら、怒り狂うだろう」
「そんな、大袈裟な」
「葉山さん、俺、まだ死にたくないです。勘弁してください」
「でも、少し練習させてくれるだけでいいんだけど・・・」
「わかった。俺がやるから、葉山は見てろ」
やった!
不本意と顔に書いているが、渋々ながらも、三洲が代わると言ってくれた。
そして、真行寺の腰の上にまたがって、肩同様容赦ない力でグイグイと押していく。
「イタっ!・・・イタタタ。そこ、うぅ・・・、きく~」
本当にこれでいいんだろうか?
ぼくには、真行寺が痛さで悶えてるようにしか見えない。
「ねぇ、真行寺くん、気持ちいいの?」
「は、い。・・・くぅ、イタキモチいいです。・・・それに、腰にあたる新さんの太ももの感触が、キモチいいっす。・・・ぎゃあ!」
ああ、もう余計なこと言うから、今思いっきり体重かけて押したよ。
「葉山、覚えておけよ。崎も図体がでかいから、強めに押してやった方がいいんだ」
「あ、そう?」
「それに、たまに太ももで刺激してやると、良いみたいだぞ」
そう言って、自分の太ももで真行寺の腰を挟むように締め付けた。
「・・・はぅ。・・・新さん、まじヤバイっす。別の所が反応します」
「な、面白いだろ?」
「・・・・・」
三洲もすっかり楽しんでるようだし、真行寺も嬉しそう。
これは、ぼくの作戦成功ってことでいいのかな?
真行寺くん、一つ夢が叶って良かったね。