20年前のカナダではまだマッサージを受ける人が少なく、マッサージ店自体が少ないと書きましたが、怪しいお店は幾つかあったようで、そのことを知ったのはこの体験からでした。
様々なコースを修了した後、すぐに自営業をしようと思ったわけではなく、まずは雇われるために求人広告を探していました。
今は廃業されてしまいましたが、日系人向けの新聞《バンクーバー新報》に、【マッサージの求人 未経験者歓迎】のような感じで求人広告が掲載されていました。
この新聞に載っている求人であるなら確実だろうという軽い気持ちで応募し、面接に向いました。
場所はバーナビー付近のEast Hastings St沿いで大通り。
周辺にはごく一般のお店が並んでいました。
でも中に入ると、午後1時だというのに部屋全体が暗くなっています。
なかから出てきたオーナーだという方は、ストレートロングヘヤに真っ赤な口紅と濃い化粧、ボディコンのミニスカートにピンヒールを履いた派手なアジア人女性。
私の顔を見るなり、ちょっと怪訝そうな顔をしながら、「この仕事に応募してきたの?」と聞いてきます。
「はい、そうです。バンクーバー新報の広告を見てきました。」
オーナーはちょっと変な顔をして私を見つめてきました。
ちらっと部屋の奥の方を見ると、オーナーと同じように濃いメイクとミニのピタッとした服を着た女性達が寛いでいました。
これはまずい、
怪しい店かも・・・
と思ったところ、オーナーは書類を取りに席を外しました。
その時に一人の従業員の女性が傍に寄り、こう言いました。
「ここはあなたが思っているような仕事場じゃないよ。辞めた方がいい。帰りなさい。」
Tシャツ、ジーンズの上にパーカーを羽織り、ショートヘヤでボーイッシュな恰好をした私に、
場違いだと、教えてくれたのです。
戻ってきたオーナーに断りの言葉を告げ、その場を去りました。
その後、この店はいつの間にか無くなっていました。