英国リフレクソロジーの学校はパートタイムの授業でしたが、7か月という長いコースでした。
先生はイギリス人男性で、日本人生徒は私一人。
私のことを、《ケイコ》ではなく《カイコ》と発音していました。
論理の説明から授業は始まり、簡単な体の仕組みを習ったあとに、なぜリフレクソロジーが身体の内臓と繋がっているのか、そしてどこに反射区があるのかを一通り勉強しました。
その後生徒間同士でリフレクソロジーを練習し合いっこするのですが、
先生が私にいつも言ってきたのが、
「カイコ、強く押さないで。」という助言。
英国リフレクソロジーは、あくまでも優しく指を這わすように足裏を軽く刺激するもので、決して強く圧してはいけないと言うのです。
つまり、台湾式(又は中国式)の強いツボ押しをする足ツボマッサージとは相反していました。
イギリスでは英国式リフレクソロジーは保険医療として認められ、リフレの資格を持った看護士さんは、病院、高齢者施設、ホスピスなどで、治療として活用していると聞きました。
でも日本、アジアでは医療としては認められておらず、この件に関しては閉鎖的です。
リフレコースを修了するには、100人にリフレを施し、それをレポートにして提出しないといけませんでした。
それが終われば先生に施術をし、合格をもらった時点で修了証がもらえます。
さて、この100人にリフレをしてレポート提出するという課題ですが、施術を施すモデルは個人個人で探さないといけません。
他のカナダ人は家族、親族、友人、知人を通じて探していたようですが、私はまだカナダに移民をして1年も経っておらず、100人の知り合いを探すことなど到底不可能でした。
そこで、日系文化センターの隣にある日系人向け高齢者施設で、ボランティアにてリフレをさせて欲しいとお願いしてみました。
日本人同士なら簡単に許可がおりると思ったのです。
でも責任をどこに預けたらいいか分からないため、ダメだと断られました。
こうゆう部分が融通利きません・・・
そこで今度は、近所にあったカナダの公共のリクリエーションセンターに行き、ボランティアで施術が出来ないか聞いてみた所、
「毎週木曜日に高齢者向けのリクリエーションを行っているから、そこでブースを立てて試してみれば?」
と、案外簡単に承諾してもらえたのです。
早速木曜日に伺い、一人でブースを作り、【リフレクソロジーを無料でします】という札を掲げ、受けてくれる人を待っていました。
《マッサージだから、きっと簡単に人が集まるだろう》、なんて単純に考えていたのですが、待てど暮らせど全く人が来ませんでした。
他のブースにはそれぞれ沢山人が集まっています。
でも呼び込みをする訳にもいかず、その待っている間に、他の人が掲げているブースをぼんやり眺めていました。
リクリエーションに来ている人達はカナダ人の男女の高齢者です。
大勢の人で賑わっていました。
そして1時間近く経った頃、あるご婦人が、私の目の前に立ってこう聞いてきました。
「ねえ、リフレクソロジーってなに?」
そうなのです。
当時カナダでは、足つぼマッサージはもちろんのこと、英国式リフレクソロジーも全く知られていませんでした。
私が知っているものだと勝手に思い込んでいただけで、
カナダ人にしてみれば、試そうと思わないのも無理ありません。
その方に少しだけコンセプトを説明し、
「一度試してみませんか?」とお誘いしました。
そのご婦人は質問をしに来てくれただけあり、好奇心が旺盛なようで、すぐに着席してくださいました。
パイプ椅子に腰かけてもらい、バスタオルを敷いた私の膝に相手の足を乗せ、リフレクソロジーを施しました。
終わった後の感想も聞き、レポートを書くために簡単にメモをして終了。
するとそのちょっと後から、また一人来てくれたのです。
ご婦人がマッサージされているのを遠くで見ていたのでしょう。
その男性の方のリフレクソロジーを終えた頃には、すでに2、3人が列になって並んでいました。
その日は休憩する暇もなく1人あたり10分のリフレをし、4時間で25人の施術が完了。
そして、その方々が他の人達に広めていってくれたのか、
次の週に行った時には、私のブースに、すでに何人もの列が出来ていて、スムーズに次々と施術をしていきました。
前回受けて下さった方々も再来で来てくれています。
リピーターさんの場合は足や身体の変化などの状態を経過観察できるため、レポート提出にも役立ち、とても有難かったです。
こうやって毎回長い列ができ、途切れることなく4時間で25人リフレをすることができ、
1か月で100人の施術が終了、
無事レポートを提出し終えました。
同時期にリフレクソロジーを受けた生徒は何十人もいましたが、ほぼ誰もリフレの仕事には就いていないようです。
自分や家族のためにという目的で行っていました。
私の場合は、最初は全く人が来なかったという経験を経ての、長い行列ができるという体験で、
人に施術をすることへの自信もつけることができ、
「よく眠れたのよ。」「足が軽くなったよ。」「体が楽だよ。」という声を聞いたことで、この仕事への楽しさが増していきました。