私の夫は結婚する時にこう聞きました。
「もちろん結婚後も仕事をするつもりだよね?」
北欧、北米でもそうですが、都市部のイタリアでは夫婦共働きが普通なので、
私にも働くかどうかの確認をしたかったようです。
学生の頃からずっとバイトをしてきましたし、両親からお小遣いをもらえなかったため、高校生の頃から毎晩夕食を作り、1か月5,000円もらっていました。
外国に住んでいた時も何らかのバイトをし、
日本に帰国した時は会社に就職もしていたため、仕事をしていなかった時期はほぼありません。
そのため働くことに抵抗はなく、結婚したら仕事をやめようと考えたこともありませんでしたが、
夫から改めてこう聞かれると、強要されるような気がして、すごく抵抗感を感じたのです。
ただ、物価高の北イタリアでは、夫婦が共働きをしなければ、余裕のある生活などとても送れず、
夫の義母をはじめ、家族、親族や友人達など、皆奥さんがフルタイムで働いています。
こういう点では、北イタリア女性の社会進出は、当時から日本よりもかなり進んでいて、重要なポジションを任されている女性職員も多く見かけました。
私が出産後、近くの公園に子供を散歩に連れて行ったときも、若いお母さん方には全く出会えませんでした。
子供を連れて来ていたのは、世話を任されているおじいちゃん、おばあちゃん方で、
「あんたは働かないの?」なんて聞いてきます。
公園を散歩している時に、一人だけイタリア人の若いお母さんと友達になりました。
彼女は南イタリアのシチリア出身で、ボローニャに数年前に住み始めたとのこと。
北イタリアのボローニャと南イタリアでは、全然人々の性格が違うと言い、ここで友達が出来ず馴染めないそうです。
同じイタリアなのに、ここは住みずらいと本音をポロっとこぼしていました。
義母は現役で働いていた為、
出産後1度も子供を預けた事はなく、
日本には実家が無いため一度も里帰りしていません。
当時仕事を持っていなかった私は、2年間の間、24時間つきっきりで子供と過ごしました。
それでも毎週日曜日の家族会合に行く度、「仕事は探しているの?仕事見つかった?」と義母から聞かれました。
もちろん子供は託児所に預けて働きなさいという意味です。
毎回毎回言われるこの言葉にプレッシャーを感じていましたが、気づいてはもらえません。
今現在の整体の仕事に就くまでは、日本で貿易関係の会社で働いていたため、
とりあえずイタリアの貿易会社らしき所に、当てもなく、また求人しているのかも分からないまま、適当に履歴書を送っていたのですが、全く返事は来ませんでした。
イタリアには求人雑誌らしきものもなく、まだネットも主流ではなかったため、どうやって仕事を探すのかさえ分からなかったのです。
ボローニャは観光地でもなく、日本人向けツーリストのバイトもありません。
お土産物屋もなく、当時日本レストランさえ存在しませんでした。
唯一、夫の友人の紹介で送った履歴書に返事があり、面接に来て欲しいと言われたのが、
ミラノと東京を結ぶプライベートジェット機の客室乗務員の仕事。
小型機なので一人だけで業務をこなしてほしいという依頼でした。
でも飛行機が嫌いで、日本に何年も帰国していなかった私が、飛行機の客室乗務員の仕事なんて出来るわけないじゃん・・・
結局ことわりました。