ボローニャの中心街にアパートを見つけ、やっと山の家から移ることが出来ました。
エレベーターのない3階の部屋は、1Rという狭さだというのに、日本円にして約月8万円強と、当時からかなり高額でした。
しかもガスコンロから冷蔵庫など、家具類は一切付いていません。
結婚までの短期滞在の予定だったため、全て新品で調達するのはバカバカしいと思い、ベッドや小さいテーブルなどは彼の友人達から借り、
その他のものは、節約をする為、手作りをする事にしました。
本棚は壁に棚を取り付けた簡易式な物、
洋服ダンスも棚を付け、その上から簾で覆いました。
流し台は、2人でDIYをして手作りです。
完璧とは言えないものの、工具を片手に無の状態から有の物を創り出す作業は楽しいものだと、この時知りました。
でもこのアパートに入った早々、大変な目に遭っています。
アパートは少々変わった造りになっていて、
私の部屋がある3階は、コの字型に幾つも部屋があるのですが、
私の部屋と、他2つの部屋の3部屋だけの前に、何故か檻の様な鉄格子が付いていたのです。
泥棒防止のためだと思いますが、とりあえず、ドアだけでなく鉄格子にも毎晩鍵をかけて寝ていました。
ある朝、玄関のドアの外と鉄格子の間を掃除していた時のこと。
突然私の部屋の玄関のドアが、風によってパタッと閉まってしまいました。
玄関のドアは自動ロック。
鉄格子には鍵がかかっています。
ただの掃除だったため、もちろん鍵は持っていませんでした。
鉄格子の鍵を取りに部屋に入ることも出来ず、鉄格子の外にも出られません。
その狭い1畳くらいの空間に、閉じ込められてしまったのでした。
しかも他の2部屋の住民はまだ誰も入っておらず、空き状態でした。
「誰かーー!誰かいませんかーー!」
と大声で助けを求め叫びました。
そのうち気付いた住民が、数人集まってきましたが、
動物園の檻の中に入った動物のようで、かなり恥ずかしい状態・・・
誰かが管理人さんに電話をしてくれましたが、来るまでに2時間くらいかかると言います。
でも何とその時、1人の日本人男性が近寄ってきたのです。
私と同じアパート、しかも同じ階に住んでいると言いました。
私よりちょっと年上のその方は、心配してくれて、日本の雑誌を何冊か持ってきてくれたり、管理人さんが来るまでずっと話し相手になってくれました。
檻を挟んだ空間で。
そのお陰でパニックにもならず、気を紛らせる事ができました。
2時間後には管理人さんが現れ、無事、牢獄の中から脱出できました。
ボローニャは観光地ではないため、他の有名な街に比べると外国人も少なく、
日本人などほぼ見かけることなどありません。
ですので、その日本人の方の顔を見ただけでホッと力が抜け、有難い助けの舟となってくれました。
※ボローニャのアパート。手作りした家具や流し台です。