アパートはヴェッキオ橋付近だったため、ヴェッキオ宮殿のあるシニョーリア広場を毎日のように通っていました。

アルノ川を含め、ここ周辺は私の大のお気に入りの場所であり、
もし観光客他ここにいる全ての人が、1日だけでもここを訪れず、この建物や風景を独占し、
この空間を独り占めする事が出来たらいいのに・・・
なんてよく思ったものです。


もちろんそんな事は叶う筈も無く、毎日人とぶつかりながら道路を歩き、べスパ(原付バイク)などの、排気ガスで汚染された空気を吸い続ける日々と奮闘していました。
(現在は大分改善されたようですが、当時の排気ガスの公害はひどいものでした。)


夏の夜になると、どこからともなくやってくるおじさんが、音響設備を整えたオーディオをかけながら、このシニョーリア広場でバイオリンを演奏しに来ます。


一人で出かけてシニョーリア広場の石畳の上に座り演奏を聴いたり、

友人と一緒にその音楽を聞きながらお喋りにふけったりしていました。



夜になると観光客も少なくなります。
曲はいつもアルビノー二のアダージョ。

私の大好きな曲です。

 

 

深い藍色の夜空に浮かぶ、精巧な光を放つ月の明かりによってライトアップされた美しいヴェッキオ宮殿が仄かに浮き上がり、

その存在を静かに示すかのようにこちらを見下ろしていました。