今でもまだ存在するのか分かりませんが、当時、フィレンツェの路上には、ストリート絵描きが沢山いました。
私のアパートからポンテヴェキオを渡り、中心街へと向かう道すがらで、シニョーリア広場付近だったと記憶しています。
ストリートアーティスト達が道路の隅っこを陣取り、道に絵を描いている光景をよく目にしました。
彼らは有名な宗教画を忠実に模倣した絵を道路に直に描き、通り行く人々からチップを貰ってお小遣稼ぎをしていました。
その中に、イタリア人のストリートアーティスト達に混じって描いていた日本人男性Tさんがいたのですが、
お喋りしているうちに仲良くなり、言葉を交わすようになっていました。
ストリートアートは、完成した後人々にほんの数時間ほど鑑賞され、
アーティストが立ち去った後は、人々の足跡によって消し去られていきます。
とても儚いアートです・・・
私はこれを見た時、チベット密教の砂曼荼羅(砂マンダラ)を思い浮かべました。
チベットの修業層が瞑想を行いながら、時間をかけて砂でマンダラを描き、完成した後は一定の手順に従って壊してしまいます。物への執着心を断ち切るための修業だと聞いた事がありました。
チベットの砂曼荼羅とは目的の趣旨が全く違いますが、一生懸命描いた作品が、ほんの数時間後には消し去られていくという儚いストリートアートに、傍観者である私でも心が痛くなったものです。
描いている本人達はすでに超越していたはずですが。
数年間もフィレンツェに滞在していたTさんは、交友関係がかなり広い方だったため、日本人を探している仕事場があれば教えて欲しいとお願いしました。
すると、その日の夜には電話があり、即面接の日時をこぎつけてくれたのでした。
5日後、面接をするために向かったのは、観光客相手の免税品店でした。
オーナーはイタリア人で奥さんは日本人、他外国人の従業員が2名いました。
時給は日本円にして800円程度でしたが、アパートからも近く好条件。
運良く即決で採用してもらい、2日後から働けるよう契約を交わしたのです。
注:当時の法律ですので、アップデートされているかもしれません。ご確認ください。
※Il permesso di soggiorno per motivi di studio o formazione consente, per il periodo di validita' dello stesso, l'esercizio di attivita lavorative subordinate per un tempo non superiore a 20 ore settimanali, anche comulabili per cinquantadue settimane, fermo restando il limite annuale di 1,040 ore.
(Conversione del permesso di soggiornoから引用。)
※学習または訓練を目的とした滞在許可証取得者は、その滞在ビザの有効期間中、週20時間を超えなければ、付随的な労働活動を行うことが許可されており、52週間まで就労可能です。年間制限は 1,040 時間です。
※上の絵はTさんの絵ではありません。