イタリア語語学学校、バイトと平行して、安く提供している個人レッスンの先生を見つけ、2か月だけ、週1回のペースで1時間ほどイタリア語のレッスンを受けたことがあります。

イタリア滞在も数ヶ月が過ぎようとし、会話の方は大分慣れてきていたのですが、

初めてイタリア語での文法の壁にぶつかってしまった時期があります。

個人レッスンの先生は、私とほぼ同年代の女性《キアラ》。
人懐っこい性格の彼女とはすぐに仲良くなり、レッスン以外でも、かなり個人的な内容の会話でいつも盛り上がっていました。


イタリア語での会話自体は、ジェスチャーなどもつけながら何とかなるものですが、文法となるとそうはいきません。

物には全て男性名詞、女性名詞がつき、主語が変化するたび、動詞も全て変形していきます。
直説法、接続法、近過去、先立過去、大過去・・・などなど、英語にも、ましてや日本語にも存在しない文法があり、かなり複雑です。(フランス語も同様に男性名詞、女性名詞があり、動詞も変化しますが、発音が難しいためもっと苦手です。)



まず条件法でつまづきました。
頭が混乱してくると、キアラに、
「ダメ!今日はやめよう!」とお願いし、レッスンを中止してもらった事などもあります。


私は、こういう時1人になることを好みました。
その時もアルノ川に行き、ぼんやり川を見つめ、頭を冷やしにいったのです。



ある時キアラの招待で、とあるパーティーに参加したことがありました。


ヒッピーのような、ニューエイジのような、異様な雰囲気が漂い、サイケデリックな模様の飾りが多い部屋の中で、皆が政治に関する討論や、スピリチャルな話題に花をさかせていました。

段々会話の内容が聞き取れず番外に居た所、突然その中にいた1人の男の子パオロが、
 

「日本人の名前が覚えられないから、Keikoにイタリア語名を名付けよう。」
と言い出しました。
 

Keikoってとてもシンプルな名前だと思うんだけど・・・

 



アナリザは、「『カルロッタ』がいい」と言い、

パオロは「いや、『ミリア』がいい」と言い、
 

私をそっちのけで、私のイタリア語名を探すのに、皆が真剣に話し合っていました。



結局『ミリア』という名前で皆の意見が一致し、『ミリア』というイタリア名を命名されました。
 

私が『ミリア』・・・?
 

何だか笑っちゃいます。

 

 


可愛らしい名前ではありますが、私はKeikoいう名前の方が気に入っていたため、
皆には申し訳なかったのですが、
『ミリア』というイタリア名は、その日一日限りの幻となって消えていきました。