「ザ・パッセージ」という映画を見た。ナチスからピレネー山脈を越えて逃亡するレジスタンスの話である。この冷酷非道なナチス幹部を演じるのが、「時計じかけのオレンジ」で主演したマルコム・マクダウェルである。とにかくやることが残酷であり直視できないシーンもあるが、マクダウェルにとってはインバクトを観衆に与える絶好の作品だったろう(いやもう時計じかけで与えているが)。ただこの憎たらしいほどの悪役たちに共通するものがある。目が綺麗なところである。この映画のラストで、マクダウェルは当然死んでしまうのだが、そのときのあの悲しさと寂しさを帯びた目がすごく印象的だった。これはたぶん悪役の俳優さん全般に言えているかもしれないが、涙を流すときや最後に死ぬときの悪役の目は本当に綺麗である。映画全体を通して嫌な印象だったマクダウェルが、最後に我々見る者の印象を変えてしまった。この人も寂しい人間だったのだなと。そんな意味ですごい俳優だと思う。さて、あのラストシーンだが、あれは現実に起こったことだろうか。実はもう雪崩でとっくにマクダウェルは死んでいて、あのマクダウェルが小屋に乱入してきたこと自体が誰かの妄想だったのではないだろうか。つまり現実、あの小屋にマクダウェルは来なかったのでは。別バージョンのラストシーンもあるが、どちらにしろあれは誰かの妄想だとしたら。何事もなかったかのように翌日(?)小屋を出ていく家族、そして主人公。全てはベールに包まれて映画は終わった。