「アバターさん、いってらっしゃい



「アバターさんって言わないでよ。おばさんみたいだから」

わたしのアバターがわたしと同じ声でプリプリしている。




バタン、とメタバースの自宅ドアを締めて出て行った。

はじめは自分と会話するのは妙な気持だったけど、だいぶ慣れた。

わたしはわたしだしね。




今日は“プレミアムアバターデー”だから出社しなくてもいい。

2月14日がアバターデーになって正直ホッとしている。




メタバース上の会社では、現実のわたしが何もしていなくても

わたしのアバターが一連の業務をこなしてくれる。

メール返信、取引先との商談、上司への報告、部下の愚痴を聞く、などなど…。




AIのわたしはさぞ優秀なのか?

いや、そこは良くできていて、「わたし以上」でも「わたし以下」でもない。

現実の能力がそのまま再現されるようになっているのだ。




だから出社しない日はジムで体を鍛えたり、

資格を取るための勉強をしたりしてアバターの能力を少しでも上げる努力をする。

それが仕事の成果にも、響いてくる。




アバターが働くようになる前、毎年バレンタインデーは大変だった。

年間の一大行事として上司や同僚、取引先にチョコを配る。隣の部署の先輩女性にも。

それが仕事の成果にも、響いてくる。




そんな日に自分磨きが出来るなんていい時代になった、

と思いながらルームランナーで走っている。

午後は資格の勉強をする予定だったが、走り疲れたので結局ダラダラと過ごしてしまった。




「ただいまー」

「おかえりー。今日はどうだった?」

「〇×▼□□×〇▼…」




全部話を聞いている時間も無いので、

頭のフォルダーを開くと今日一日の出来事が見られる。

商談での大事なシーンは動画でも保存されているので、わかり易い。




お財布フォルダーを開くと、出かけた時よりも仮装通貨が6,500コインも減っていた。

500コインはランチ代、6,000コインはチョコレート代、とある。




わたしのアバターは疑似チョコを買って、会社のアバターたちに配っていたのだった。

仮想疑似義理チョコでポイント稼ぎができるなら

苦労して自分磨きをするよりも楽かしら…?と思う。




わたしはわたしだし、ね。




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仮想空間でもコミュニケーションを円滑にするために

AI同士が贈り物をするような時代がくるのでしょうか。


社会人は成果主義などと言われますが、

がんばり過ぎずに、ちょっとした心遣いや工夫で上手く乗り切りたいですね。