満月まであと3日、って月が、
こんなにも夜の世界を明るくしてくれるなんて。
凍った池は青白く光っていた。
嬉しくて嬉しくて、
この景色を独り占めしている贅沢さに気が遠くなりそうで、
池の上で、ひとりワルツを踊った。
遠くに連なるチュガッチ山脈が、やっぱり青白く光りながら、踊る私を見守ってくれていた。
どこか有名な山頂に立ったわけじゃなし、
有名な国立公園ってわけでもないし、
オーロラが舞っているわけでもないし、
日本のガイドブックには一生載らないような、平凡な場所かもしれないけど、
でも、
この日、ここで見た風景、
キーンと凍てつく空気、
圧倒される静けさ、
濃密なゆっくりと過ぎゆく時間、
私の記憶には、一生残るであろう、卒倒しそうなくらい美しい夜だった。
そして、
池のほとりでは、
焚き火を囲んで、赤く照らされたMattとMasa兄が、
笑いながら、踊る私を見守ってくれていた。
チュガッチ山脈の麓で、バックカントリーキャンプの夜。
思い出すと、今でも涙がでてくるような、
そんな風景に、あと何回出会えるだろう。