「東大寺」は奈良時代に聖武天皇により建立されたので、そのご恩に感謝するため 毎年 5月2日~3日に「聖武天皇祭」が開催されます。
5月2日 --- 練り行列と御忌法要。 舞楽、能の奉納。(鏡池の水上舞台で)
5月3日 --- 近くの聖武天皇陵に参拝、読経、茶花の御供え。
東大寺に戻り、お茶壷道中→大仏殿での献茶式
これらの催しは、この日東大寺へ行くと、一般の方も観覧する事ができます。
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舞楽の奉納 (写真はすべて拡大できます。)
この舞台は、大仏殿のすぐ南にある「鏡池」に作られた特設舞台で、通常は設置されていません。
修学旅行では、「鏡池」越しの大仏殿を背景に集合写真を撮るのが多い あの池です。
聖武天皇陵の参拝
5月3日早朝に、東大寺の別当、長老等の僧侶と 檀家代表の方々が 近くの御陵に参拝し、読経と献茶(奉茶)をします。
この時の献茶は、裏千家の奈良の先生が行ない、「聖武天皇陵」と東隣にある「光明皇后陵」の墓前にお茶とお菓子をお供えします。
ここは、宮内庁の管轄で、警備の方が常駐していますが、参拝が終わると、[するめと昆布」を戴いたような記憶があります。
聖武天皇陵の場所は 天皇陵HPを見てください ----→ ”☆”
お茶壷道中
行列の最初に、5~6人の僧侶が行進し、その後に 鵬雲斎大宗匠と業躰先生2人が続きます。
駕籠に載った茶壷。
この中に、石臼で抹茶に挽いて、大仏様にお供えする為の茶葉が入っています。
この日の朝に摘まれた新茶用の若葉も御供えされます。
「大和茶レディ」も行列に参加しています。
献茶式
お献茶は、この大仏様の目の前で行なわれ、 祭壇は、聖武祭用の特別な飾り付けです。
献茶点前は、
最初、白布の上においてある石臼で茶葉を挽いて抹茶にして棗に入れ、
その後に、左の立礼席でお献茶の作法で点前を行い、お茶を点てます。
そして、天目台に載ったお茶碗を持って、右の階段を登って御供えします。
御供えは2碗あり、2回お茶を点てます。(薄茶の濃さです)
神仏にお供えするお茶は、お茶を点て終わった後、最後に1杓の抹茶を上から加えます。
これは神仏に「香り」をお届けする意味合いからと思われます。
又、点前中に息がかからないようにマスクをしますし、運ぶ時は 木の蓋をします。
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ハプニング
この日、ハプニングの撮影会がありました。
それは、裏千家の鵬雲斎大宗匠が 茶壷道中の行列に途中参加するため、大仏殿の回廊正面にある中門で、 待機していました。
ところが、行列が30分ほど遅れた為 とても気さくな大宗匠が、大仏殿に来られた一般の方に 「どこから来たの?一緒に写真を撮ろう」と、気軽に声をかけられ、行列がくるまでの間 「撮影会」になってしまいました。
やはり、有名人なので、皆さん感激してカメラに撮っておられました。
外国の方にも、英語でお話しをされ、記念写真を撮っておられました。 さすがに、外国慣れしておられます。
鵬雲斎大宗匠は、戦争中は特攻隊員で、運良く生き残ったので、国際平和活動もご熱心で、「一碗からピースフルネス」を合言葉に、外国への茶道文化の普及に務めておられます。 今年、87歳なのに お元気です。
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この献茶式に付随して、「華厳茶会」が開催されました。
この名前の由来は、「東大寺」は華厳宗大本山よばれ、その華厳宗の名前を冠した「東大寺のお茶会」であるからです。
もともと、裏千家十五代家元の鵬雲斎大宗匠が提案されたもので、東大寺と裏千家が主催するため 全国的に有名な茶会となっています。
毎年、京都や奈良は元より、大阪・東京・三重・愛知・石川など、全国各地から 総勢1,100名の茶人や数寄者の方々が この華厳茶会に参加されています。
茶会の案内状 (クリック拡大すると読めます。)
茶席・点心席 等の案内
茶席は 3席あります。
① 拝服席(濃茶) --- 裏千家・今日庵のお席で、業躰先生がお点前をしてくださいます。
お天気も良く、本坊の庭はきれいで 杜若が咲きはじめていました。
下写真の左奥に見える建物が、拝服席のある奥殿です。
拝服席の、お菓子は 例年「唐衣」(からころも)で、御製は「鶴屋吉信」製です。
このお席は、格式が高い席で 「縁高」という菓子器に入れて出されます。
床(とこ)の掛軸は清巌和尚筆の「摶風」、青磁の花入に「牡丹」と、格式が高い席でした。
お棚は桐木地「四方瓢棚」で、染付けの水指が載っていて、清々しい感じです。
② 副席(薄茶)
ここのお席は 大仏殿の西にある 「集会所」(”しゅうえしょ”と読みます)で行なわれます。
床の掛軸は 「無準師範」書の「一月現衆水」と、難しい禅掛です。
無準師範は「ぶしゅんしばん」と読むそうで、中国・南宋時代の禅僧なので、今から800年位前の書です。
掛軸は、「一つの月は衆(もろもろ)の水に現(うつ)る」と読みます。 意味は、月を仏心、水を凡心に例えると
理解できるかも知れません。
③東大寺席(薄茶) --- 勧学院の本堂に設けられた席です。
茶席以外に、点心席と 施茶席があります。
④点心席 --- 本坊の広間にあります。
点心席のある広間の写真
点心席から 本坊内の美しい庭を見る事ができます。
点心は、京都の老舗料亭「辻留」の 仕出し弁当と 吸い物(赤だし)です。
接待は、裏千家・淡交会(師範の会)の奈良支部が行いますが、台所では「辻留」の調理師さんが4~5人来て準備をしてくれます。
特に、驚くべき事は、東大寺の広間に隣接する台所の熱源は、ガスが無く「かまど」で、薪を焚いてお湯を沸かし、お茶や吸い物を作っていることです。 今どき珍しいですね!
⑤施茶席 --- 大仏殿の東回廊にある席で、並ぶと 一般の方も 無料で席に入ることが出来ます。
この席の担当は、裏千家・奈良の青年部による野点席となっております。
お菓子は、落雁のような吉野葛のお菓子です。
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この「華厳茶会」は、高額な茶券代にもかかわらず人気があります。
茶席の道具が一流の良い品が出される事と、記念品に良い茶道具をいただける事ではないかと思われます。
今年の記念品は、木の「香合」です。