あの一糸乱れずに咲き誇る蘭の花。
一斉にこっちを向いている。
その花が語りかける。
「綺麗でしょ!ねっ!綺麗でしょ!」
花だからと言って、油断していると
グイグイと自己主張してくる。
私はなるべく目を合わさない様にしているのだが、向こうの方から目を合わせに来る。
「ねっ!どう??今日も綺麗でしょ?」
もしかしたら造花じゃないかと思って、そっとその花びらを触って確かめた事も、一度や二度ではない。
出来れば造花であって欲しい…
出来れば人工の花であって欲しい…
しかし大体は願いも虚しく、水の恵みを思わせる確かな感触が指を通り抜ける。
先日母の住む故郷へ断捨離の手伝いで帰った。
ここは、蘭の花を何回も咲かせでは部屋を賑わせている。
「この蘭の花はもう五年になるのよ。」
「えっ?五年もずっと咲いてるの?」
「そうよ。」
化け物か…。私はますます蘭の花に恐怖を感じた。
しかし、母の話をよーく聞くと、その花は造花だったのだ。
造花なら一生もんじゃないのか?
それとも蘭の造花は5年括りなのか??