小学一年生の初めての夏休みを控えていたある日。
初めての夏休みに際して注意事項を伝達する授業があった。
担任じゃない、多分教頭とかそこらの地位のある先生。
夏休みの日誌が配られて、説明が始まった。
初めて見る夏休みの日誌に、早くもワクワクが止まらない。
夏休みを象徴する様な楽しい絵が描いてあるそのページを開けと指示があり、指示に従う。
先生は言った。
「先生が良いと言うまで、決して喋ってはならない。」
大人しく先生が説明するその絵を凝視していた。
絵の中に風鈴があった。
私は最近、風鈴と言う言葉を覚えたばかりで身体がウズウズした。
先生が1つ1つ絵の説明をしている。
「絵の中に何があるかな?スイカと…」
と先生が言ったその後
「風鈴」
と我慢出来ずに言葉が口から出て来てしまった。
『誰だ!今喋ったのは!」
学校の先生ってどうしてあんなに怒鳴り声がデカイのだろうか?
教室の窓に
教室の床に
先生の怒鳴り声がこだました。
私はおずおずと手を挙げて白状したんだと思う。
それでもこの時は、風鈴を知っている自分が誇らしかった。
自己満足出来る性格なら、先生に怒鳴られるのを分かっていて、わざわざ喋らない。
私はもしかしたら、
「喋ってはいけないと言ったけど、よく知ってたね。でもこれからは黙っているんだよ」
などと言われるのを心のどこかで期待していた。喋りたかったのは、「風鈴」だけなので、後はきっと大人しく出来ると、思っていた。
夏休みの宿題。真面目にやった事が一度もない。