■ ストレッチとは

スポーツや医療の分野においてストレッチとは、 体のある筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉を引っ張って伸ばすことをいう。筋肉の柔軟性を高め関節可動域を広げるほか、呼吸を整えたり、精神的な緊張を解いたりするという心身のコンディション作りにもつながるなど、様々な効果がある。 なお、ここでいう筋肉とは骨格筋のことである。 

■ ストレッチの種類

ストレッチには大きく分けて3つの種類があります。

① スタティックストレッチ

同じ姿勢をキープし、じっくり筋肉を伸ばす方法が「スタティックストレッチ」です。

スタティックストレッチのメリットは「柔軟性(静的柔軟性)」を高める効果が高いこと。また、筋肉の緊張をやわらげ、血行を良くすることで、疲れやカラダのだるさを改善することができます。

② バリスティックストレッチ

反動をつけて行うストレッチを「バリスティックストレッチ」といいます。イメージしやすいのは、アキレス腱を伸ばすストレッチです。グッグッと反動をつけて行ったことがある方もいるのではないでしょうか。

バリスティックストレッチは、反動を使うぶん、スタティックストレッチよりも筋肉を伸ばす効果が多く得られます。しかし、急激に筋肉を引き伸ばす動きでもあるため、筋肉や腱を痛めやすく、あまり推奨されていません。

③ ダイナミックストレッチ

カラダを動かしながら筋肉を伸ばしていく方法を「ダイナミックストレッチ」といいます。ラジオ体操も、ダイナミックストレッチの一つです。カラダを動かしながら行うため心拍数が上がり、カラダが温まって筋肉が伸びやすくなります。

④ PNFストレッチ

PNFストレッチはまたいつか詳しく解説したいと思います。

■ ストレッチの注意点

ストレッチングを行う際の注意点がいくつかあります。注意点を守らなければストレッチングの効果が十分に得られなかったり、逆効果になることがあります。

① 呼吸をとめない

ストレッチを行っている最中は自然に呼吸を続けます。呼吸を止めると身体は緊張状態になり、筋が硬くなるため、十分に筋を弛緩させることができなくなってしまいます。また、呼吸を止めることで血圧が上がるなど身体に負担がかかることがあります。ストレッチ中は鼻と口を使って細く長く呼吸をしながらリラックスした状態で、気持ちよく筋をストレッチしてみてください。

② 反動をつけない

ストレッチ中は、勢いや反動をつけずに、ストレッチの対象となる筋を少しずつ伸ばしていきます。筋は急激に伸ばされると、筋断裂などの傷害を防ぐために筋内の筋紡錘(きんぼうすい)※1が働き反射的に筋を収縮させます。そのため、反動をつけながらストレッチを行うと、反対に筋紡錘の働きにより筋が収縮してしまいます。反動をつけることで柔軟性が低くなる恐れがあります。

※1 筋紡錘(きんぼうすい):
筋紡錘(きんぼうすい)とは、骨格筋中にある紡錘形の微小な感覚器。筋肉がどの位伸びているか感知して手足の位置・運動・重量・抵抗の感覚(緊張)を起こす役割があります。

③ 無理をしない

ストレッチは「気持ちいい」範囲内で行います。柔軟性が低く硬い筋の場合、ストレッチングを行うと痛みを伴うことがあります。ストレッチングで痛みがある部位を過度にストレッチしてしまうことを「オーバーストレッチ」といい、筋を痛める原因になってしまいます。「痛気持ちいい」程度で行うと最も効果が得られやすいでしょう。

■ ストレッチの順序

基本的には自店では、全体的なマッサージ施術の後、もしくは部位別マッサージ施術の後を推奨しています。
(アスリートの方はウォームアップ後、またはワークアウト後が推奨です。ただし、試合等の動的活動前にスタティックストレッチを行うとパフォーマンスにマイナスの影響を及ぼす可能性も指摘されています。)

■ 理由

血流が少なく冷えた筋は、血流が豊富な筋より傷害や損傷を受けやすくなります。マッサージによってわずかでも筋温や体温を上昇させておくことで、安全にストレッチを行え、以下の効果を期待できます。

・ヘモグロビンとミオグロビンにおける酸素解離の促進
・筋への血流量の増加
・神経受容体の感受性の向上促進
・神経伝達速度の向上
・筋粘性の低下

ウォームアップ中に起こる組織温の上昇は、以下の3つの結果として生じます。

① 筋収縮中におけるフィラメントの滑走による摩擦
② エネルギーの基礎代謝
③ 筋内の血管拡張

■ NSCAのテキストでは、受動的ウォームアップとして以下の説明もあります。

受動的ウォームアップは温かいシャワー、ホットパック、マッサージなどの方法で行なうことが可能です。多くの研究は受動的ウォームアップ法に効果を認めています。

■ 余談ですが、下手なマッサージ行くくらいなら、スーパー銭湯の炭酸泉に入るほうが良いとお客様に普段から言っている自分ですが、ヘモグロビン酸素解離曲線におよぼす人工炭酸泉浴の効果についての研究があります。

人工炭酸泉にはHb酸素解離曲線の右方移動を起こさせる作用のあることが考えられ、その発現機序として炭酸泉による循環血液の温度上昇による以外に、一部には赤血球量の増加による可能性も考えられた。


※ 生体がアシドーシスになるとヘモグロビンが酸素を離しやすくなり,酸素解離曲線が右側へ移動します。 これを「右方偏位」と言い,組織への酸素供給が増えることを意味します。 逆に、アルカローシスになると酸素を離さなくなり、酸素解離曲線が左側へ移動します。

参考引用
https://melos.media/training/21828/