二日酔いってのは、いつも大抵、悪酔なんだけど、今朝は前日にけっこう飲んだと思うのだけれど、二日酔いはたいした事なかった。

たぶん、体感的にはいつも通りのアルコールの血中濃度……つまり、週末に調子に乗って呑みすぎて、翌朝に気持ち悪いわ、頭痛いわと無駄な後悔するパターンと同じくらいのレベルのはず。

でも、なんだか昨晩は酔えなかったし、二日酔いにすら敬遠された。

いい事なんだけど、古くからの友人につれなくされたみたいで、二日酔とは違った意味はで、気分はすこぶる悪かった。


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昨日の夜、医師からの面談で叩きのめされた僕ら夫婦の最初の壁は、上の子供ら、兄弟への報告という仕事だった。その日は子供らをずっと待たせていた。

小児病棟から離れた待合スペースは飲食可能で割と広い。

けれど、小学校3年生と1年生の坊主を二人で夕餉時の3時間も放置していて良い訳はない。

二人は引っ付きもっつきでDSで遊んでた。長い時間ゲームをする姿にはいつも忌々しい感情しかわかないのだけれど、このときばかりはゲームメーカーとまんまと思惑にはまった息子らに感謝した。

僕は、そんな子供らの姿を見て直ぐに駆けつけ……られなかった。小さなゲーム機に目を向けたままでこちらに気づかない二人を置いて、「先に、何か食べるモノを調達してこようか」妻をうながした。正直に言うと、そこから逃げてしまいたかった。

病院のコンビニで子供等におにぎりを買った。妻は何も手に取らなかった。僕も同じ気分なんだけど、とりあえず、コーヒーゼリーを2つ買った。

夫婦してトボトボ歩き、妻は時々立ち止まり、また重い足を運びながら、娘の病室へ。それから彼女をベビーカーに寝かせてもう一度兄弟元へ向かった。

「遅いよ、パパ」とまだゲームをしたまま長男が言う。次男もまだゲームに夢中。

家族揃って晩ごはんを食べた。子供らのおにぎりを分けて、父はコーヒーゼリーを開ける。母は泣いている。それから父が赤ちゃん、生れたばかりの妹のピンチを話す。

「みんな心配してたハユルの病気について、先生からお話しがあったんだよ……どうも、あの子はママのお腹の中で大きな怪我をしてきたらしい。頭の奥、脳に沢山悪あい所があった。」

子供らの反応は静かだった。

「まだ、詳しい事はわからない。先生も分からないって言ってた。ただ、お怪我が大事な脳にあるから、これから心配事が出てると思う。」

長男がようやく雰囲気にやられて愚図りだす。

母が言う「はーたんは、ひょっとしたらずっと歩けないかも知れないの、話も出来ないかも知れないの……」

「お兄ちゃん二人だから、それぞれ何て呼んでもらおうかって話してたのに……できないかも……」子供らの前で妻は泣いている。

最後に父から、二人には僕ら家族で小さい妹さんを守ってやろうとお願いをし、それから兄弟にはそのせいで不自由や、不便を掛けることになるかも知れないの事を詫びた。

この日二回目の嗚咽。子ども達の前だから、って我慢したけど、駄目だった。


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そんな僕らの世界がひっくり返った昨晩の事を思い出すと、身がすくみ、頭がキンキンした。それでも息子らに朝ごはんを食べさせて、病院へ行かなければ。それに土曜日は剣道の稽古がある。

何かしらやる事があるは良かった。しんどいけど。

妻と娘との待つ病院へ向かい、土日を家で過ごす。家に帰ってくるのに、外泊とはコレ如何に……

最初に処方薬されたお薬、テグレトールはセレニカRに変わっていた。

娘の点頭てんかんは寧ろ多く、時々強くなっている様だった。