「Market?」
バスの中で、スーツケースを持った女性が尋ねてきた
日本人に見えたけど、どうやら旅の外国人らしい
ああ~買い物がしたいんだな
次のバス停はデパートの前だ
すみれは自信を持って笑顔で答えた
「ねくすと でぱーとめんと」
「Apartment?」
あれっ、通じなかった(笑)
「のぉ~のぉ~ でぱーとめんと すとあ」
旅人は手の平を縦にヒラヒラさせながら
「Fish?」
そっか~魚が欲しいんだね
「んだ♪ ふぃっしゅ ふいっしゅ」
デパ地下にあるよって言いたかったけど、地下って、、、?
B1B2のBって、何の略だっけ
旅人は観光地図を開き、今度は駅を指差した
「Walking?」
うんうん、駅からも歩けちゃう距離だよ
「いぇす うぉーきんぐ おっけ!」
親指と人指し指で、ローラかとツッコミたくなるほどの丸を作った
こうなったら何でも答えるぞ。さあ次の質問は?
旅人は青森魚菜センター、のっけ丼の写真を指差した
魚を買いたいのではなく、お目当てはのっけ丼だったのね
まずはご飯を買って市場の中を廻りながら、その上に好きな刺身をのせていくのっけ丼
観光客や修学旅行生に大人気で、平日は出張らしきビジネスマン等も見かける
以前1回やったけど、自分好みの海鮮丼を作れるのが楽しかった
サーモンがいいかな、甘エビがいいかな
鮪はもう乗せちゃったけど、あっちのお店の方が大きかったな、とか
こっちのお店はイカを何切れかサービスしてくれた、とか
新鮮なネタだけではなく、ワクワク感も味わえるのだ
待ち合わせにはギリギリ間に合いそうだ
旅人には、青森での良い思い出を作ってほしい
分かりやすい場所まで旅人を送って行こう
すみれも市場の最寄りのバス停で降りた
この日お天気は快晴、青森にしてはポカポカと暖かい陽気
歩道の雪も少なくなり、並んだブーツの音も軽やか
「ほぇあ あー ゆー ふろむ?」
2人組の旅人は声を揃えて、元気に「台湾」と答えた後
「Aomori Good!」とポーズを作ってくれた
なんか喜んでくれてるみたいだ、嬉しい
信号の向こう側にのっけ丼の市場があるよ
信号ってどう言うんだっけ?思い出せなーい
ベネッセお試しチャレンジ申込んで、しまじろうに指導してもらわなきゃ
信号を指差しながら、咄嗟に口から出たのは
「ぶる~ れっど いえろ~」
おまけにグーパーグーパーで、信号のピカピカを表現してみた
「Blue Red、、、?? 、、、light!!」
調子に乗っったすみれは、観光案内という次なるステージに挑戦した
道路の向こうを見ると、浅草焼が見える
「あそこに見えるおやき屋さんは、青森のソウルフードなの
青森なのに何故か、浅草焼って名前のお店ww
粒あん、白あん、クリーム、二色巻き
安くて美味しくて、あんこがタップリ
季節によっては、桜あんやチョコバナナ味なんかもあるよ
すみれは定番の粒あんが一番好き」
と言いたかったのを、この言葉に賭けてみた
「すいーつ♪」
ぱくぱく食べるアクションをしながら、旅人はリピートしてくれた
おもっきりカタカナ発音で、歯の裏に舌をつけなくても、丸めなくても、
そもそも中1レベルさえ満たしてないというのに
今までの会話って、何となく全部通じてる気がする
ふふふ、しましまトラのしまじろう必要ないかも
それにしても日本の中から、青森を選んでくれてありがとう
ナイスなチョイスがイイっす
さあ~そろそろ市場が見えてきた
最後にすみれは市場を指差し「のっけ丼♪」と高らかに言った
笑顔の花が咲いた国際交流の幕は下りた