加納朋子「ぐるぐる猿と歌う鳥」


 「かつて子どもだったあなたと少年少女のために」を合言葉にしたジュブナイルミステリーのレーベル・ミステリーランドの一冊です。加納朋子さんは未読の作家さんだったので、わくわくしながら読めました。タイトルと表紙が特徴的で、それだけではどんな内容か予想できない物語でした。

 直接ストーリーに関係無いので書きますが、ぐるぐる猿と歌う鳥(ハチドリ、ハミングバード)はナスカの地上絵のアレです。章が進むたびに新たな展開にドキドキできる傑作で、おすすめの本です


 主人公は小学5年生男子の森(シン)です。子供の頃に連れ去り事件に巻き込まれたトラウマを負って、現在は要領が悪く乱暴者と思われがちです。父親の仕事の関係で東京から北九州へ引っ越すことになりました。引越し先は工業地帯の社宅で、街全体が社宅だらけです。上手く新しい環境に溶け込めるか心配したシンですが、社宅の子供達はみんな優しく受け入れてくれます。

 ですが、仲間の中にパックという正体不明の不思議な少年が紛れ込んでいました。不思議な仲間と、過去の事件が絡まり圧巻のラストでした。


 序章は、正直何を読んでいるのかわかりませんでした。「はれときどきぶた」の様な不思議ファンタジー小説かと思ました。半ばからは、しっかりジュブナイルミステリーになってきます。パックの秘密や暗号、主人公シンの過去の事件の振り返りが畳みかけます。

 未読の作家さんでしたが、圧倒されました。ジュブナイルですが、大人にもおすすめの本です。