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~会者定離~

 学校・大学は学期末を迎え、それぞれの学業の成果をまとめつつ、次の段階への準備に入りました。これから人々の離合集散の季節に移ります。
 そして新しい出会いが待たれるのですが、その前に惜別、離別を経なければならないのは、避け得ぬこととはいえ、悲しいことです。

 さてこの離別の情ですが、平安時代最高の文化人、文学者、歌人の 紀貫之が、哀切に詠んでいるので紹介してみましょう。 貫之の名歌の1つとして有名です。
 むすぶ手の 雫に濁る 山の井の 飽かでも人に 別れぬるかな(古今集404番)
 (山中の湧水を掬いとろうとする手から落ちる雫が、水をかき乱して濁りがひろがる。
 ここであなたと出会い、想いを言い尽くせぬまま名残惜しくも別れることになってしまったことだ。)
 この「人」とは男・女どちらでも成り立ちますが、ここでは女性でしょう。しかしどのようなひとであったのか。
 ところで、ことばの表面の意味は「心ゆくまで想いを交わすこともできずに、あなたと別れることになってしまった」ことなのですが、このことばの下には、
 この雫の波紋に乱れた清水のように、私の心に、言い尽くせぬ悲しみが広がっていく。 という、私の心が映されていることが解るとおもいます。

 会者定離ということわりは誰でも承知はしているものの、現実にはやはり切ないものです。だから昔から今でも歌われるものなのでしょう。

 平成27年如月27日