ふるさと万華鏡 第51回

「十和田湖の景観をつくった火山活動~遊覧船で火山の学習」

 

 十和田湖は、十和田火山の活動によってできた凹地(カルデラ)に、水が溜まってできたカルデラ湖であることはよく知られています。加えてカルデラは、外側のカルデラと内側のカルデラの二重になっており、独特の景観を作りだしています。

 外側のカルデラは、約1万5千年前の巨大噴火で完成し、その後、内側南東部で新たな噴火が繰り返され、円錐形の火山体ができました。この火山体を五色岩火山といいます。やがて噴火は爆発的なものへと変化し、火口が次第に大きくなりました。この間、特に規模が大きかったのは9,200年前と6,200年前の噴火で、主に県南地方に大量の火山灰と軽石を降らせ、縄文時代の人々の生活に大きな被害をもたらしたています。最新の噴火は平安時代の西暦915年と考えられており、これによって内側のカルデラが完成しました。御倉半島と中山半島に囲まれた中湖が五色岩火山のあった場所で、両半島が火山体の残存部です。

 十和田湖で遊覧船に乗り中湖を巡ると、五色岩火山の内部を見ることができます。奇岩の烏帽子岩は地下から上昇してきた溶岩が冷えて固まったもの、火山の名前の元になっている赤褐色の五色岩は火山体を形成する際に積み重なった火山噴出物です。五色岩火山の西麓にあたる中山半島西岸には、溶岩からなる六方岩や恵比寿大黒島などの島々があり、柱状の割れ(柱状節理)が発達しています。御倉半島北端のドーム型の御倉山は、7,500年前の活動でできたものです。十和田湖は、美しい景観を楽しむだけではなく、火山の学習もできる貴重な場所ともいえます。

 明治時代に十和田湖を訪れ、その雄大さや美しさに感動し、全国に十和田湖を紹介した人物がいます。高知県出身の文人・大町桂月です。桂月は十和田湖の国立公園指定にも貢献し、晩年は十和田市奥瀬の蔦温泉に本籍を移しています。今年、没後100年を迎えたことで、その功績を再確認しています。

なお、十和田火山の活動について、令和7年5月31日(土)の当館土曜セミナーで紹介しました。また、7月6日(日)には蔦温泉のある蔦沼で当館主催の自然観察会を行いました。どちらもすぐに定員に達し、大勢の方に参加いただきました。

(青森県立郷土館副館長 島口 天)

 

*文章は、『東奥日報』木曜版掲載の当館連載記事(2025年5月22日)を基にしています。

 

 

湖岸北側の御鼻部山展望所からみた十和田湖

 

中湖東岸(御倉半島)の火山噴出物が重なる五色岩