ふるさと万華鏡 第50回

「縄文時代がはじまる頃の自然環境」

 

 今から約20,000年前、年平均気温は現在より8℃前後低く、氷河の拡大により海水面は120~130mほど低かったと考えられています。このため陸奥湾は陸化し、津軽海峡は幅が狭く川のような状態、亜寒帯に分布する針葉樹を主とした森林が広がっていたことが想像されます。このような寒冷な環境下、この頃までナウマンゾウやヤベオオツノジカ、ヒグマ、トラなどの動物たちが生息しており、県内では東通村尻屋周辺の石灰岩地帯から保存状態の良いこれらの歯や肢骨、脊椎骨など化石が産出しています。

 時を経て、前述の大型動物たちは姿を消し、気候は寒暖を繰り返しながら温暖化し、海水面は上昇していきました。約12,000年前以降には、針葉樹林はドングリなどのコナラ類やブナなどの落葉広葉樹を主体とした森林となっていきました。このような環境下に生息していた動物は、現在とほぼ同じ種類です。

 年代は前後しますが、縄文時代のはじまりの頃、約15,000前に十和田火山が巨大噴火を起こしています。噴出した大量の火砕流は、青森・秋田・岩手の広範囲に壊滅的被害をもたらし、この噴火を含む複数回の巨大噴火でカルデラという陥没地形が形成され、そこに水が溜まって十和田湖の原型ができました。十和田火山はこれ以降も噴火を繰り返し、火山灰や軽石が飛来した主に県南地方の人々の生活に影響を及ぼしたと考えられます。

(青森県立郷土館副館長 島口 天)

 

※文章は、『東奥日報』木曜版掲載の当館連載記事(2025年5月15日)を基にしています。