青森は夏祭りでにぎわい、じゃわめく[津軽弁。心が躍り、うずうずする意味]頃になりました。ここで、令和7年度の青森県立郷土館公式ブログ「Weeklyきょうどかん」を再開します!今年度、新たな体制を整えるために4ヶ月お待たせしました。今回からは、地元の新聞『東奥日報』で毎週木曜日に掲載している記事を基に再編集した内容をお届けします。長期休館中も新聞で、青森の自然や歴史・文化について学芸員が紹介しています。新聞を見逃した方、新聞頒布地域外の多くの皆さまに青森県を知っていただきたく思います。まずは、令和7年度の掲載分からはじめ、その後令和6年度以前の連載記事を公開する予定です。

 

ふるさと万華鏡 第47回

「大平山元遺跡出土品 国重要文化財へ」

 

令和7(2025)年3月21日に国の文化審議会は、外ヶ浜町大平山元遺跡の出土品を国重要文化財(以下、重文と表記)に指定するよう文部科学省に答申しました。なお本指定は、国の官報に告示される8月末以降となります。

現在、国内には国宝51件・重文624件の考古資料があり、旧石器時代のものは国宝1件・重文10件です。さらに後期旧石器時代後半から縄文時代に移り変わる時期までに絞ると4件のみです。ここに大平山元遺跡の出土品1件570点が新たに加わります。

国内最古の土器が発見されたことで、縄文時代草創期を代表する遺跡となった大平山元Ⅰ遺跡と旧石器時代を主体とする大平山元Ⅱ遺跡は、「大平山元遺跡」として平成25(2013)年に国史跡に指定されました。そのうち大平山元Ⅰ遺跡は世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産でもあります。

本遺跡は、後期旧石器時代後半(約20,000年前)から縄文時代草創期(約15,000年前)までの各段階の道具(石器)の変遷が追える北日本で唯一の遺跡です。石器の製作技法には、北海道や関東・中部地方の特徴を示すものもあり、日本列島各地と広域に係わっていたことも伺えます。

最も重要な点は、大平山元Ⅰ遺跡で旧石器時代の特徴を持つ石器群と縄文的な石器(石鏃、尖頭器、石斧)と土器が伴う国内初の事例であること、さらに土器片に付着した炭化物の年代が約16,500年から13,000年前と国内最古の値を示していることにあります。このため土器は無文の小さな破片ですが、これらは縄文時代の始まりを考える上で、世界的にも重要な資料となりました。

土器が出現した当時は、今より寒冷な気候で、トウヒ属やモミ属、カラマツ属などの亜寒帯性針葉樹林が生育した環境と推測されています。そのなかでどのように土器が利用されたのでしょうか。鮭などを食用とするためでしょうか。

現在、大平山元Ⅰ遺跡は史跡公園となり、そばには令和7年4月26日に開館一周年を迎えた展示施設むーもん館があります。ここでは重文となる資料をはじめ町所有の出土品を常時見学できます。なお大平山元Ⅱ遺跡はⅠ遺跡の東側に位置し、大平八幡宮や地区集会所がある一帯です。

570点の大半は、文化庁主催の令和7年度 新指定国宝・重要文化財展(京都文化博物館、4/19~5/11)で展示されました。県内では、6月14日の当館土曜セミナーにて一部を紹介し、6月17日~22日はむーもん館の「おかえり石斧展」で当館所蔵資料7点が初めて地元で展示されました。今後も多くの皆さまにご覧いたけるよう公開場所を検討しております。(青森県立郷土館学芸主幹 杉野森淳子) 

 

*文章は、『東奥日報』木曜版掲載の当館連載記事(2025年4月24日)を基にしています。