9月29日(日)、青森市浅虫を会場に「自然観察会」を行いました。

 今年は午前が浅虫温泉森林公園で森の自然観察、午後が浅虫海洋生物学教育研究センター周辺で磯の自然観察の二本立てで計画しました。夏の暑さも過ぎ去り、当日は天気に恵まれ、絶好の観察日和でした。

 

 午前中は、当館ゲストキュレーターの齋藤信夫先生を講師に、植物の観察を中心に進めていきました。齋藤先生が観察の時に大切にしていることは、五感で観察を楽しむということで、「見る」「触る」「嗅ぐ」「味わう」「聞く」という五感をフル活用した観察方法を教えてくれました。

 

 

 

 植物の葉は一般的に緑色ですが、濃い緑、薄い緑などその色合いは植物ごとに微妙に違います。また、葉を触ってみると、ツルツルしたもの、毛の生えているもの、裏表で感触の違うものなど、多くの情報を与えてくれます。「嗅ぐ」「味わう」「聞く」という行為も上級者にとっては、植物を特定する重要なヒントになるようです。どの参加者も齋藤先生の分かりやすいだけでなく、ためになる解説に興味深げに耳を傾けていました。

 私が面白いと感じたのは「ハナイカダ」という植物です。葉の真ん中に1ヶ所、出っ張った所があり、それが何かと問われたとき、何だか検討もつかなかったのですが、ハナイカダは、葉の中央に花を咲かせ、そこに実がつくそうです。出っ張った部分は、その名残で、残念ながら花も実も時期的に終わっていましたが、Webで検索するとその姿に驚きました。また、葉を筏に花を船頭に例えたネーミングもユーモアがあるなと思いました。

 

 

 

 

 次に「マルバマンサク」という植物を紹介します。この植物も残念ながら花の時期は終わっていたのですが、実ができていました。実を見ると形状が2種類あり、ツルンと丸い実とトゲトゲした実がありました。ツルンと丸い実が正常なもので、トゲトゲしたものは中に虫が入った虫こぶ(虫えい)と呼ばれるものです。実際に割って中を見ると小さい昆虫がいました。

 

 

 

 

 最後に、「ナラ枯れ」という現象を紹介します。写真のように、森林の緑の中に不自然に褐色の木が見られます。その木の根元まで行くと、木の幹が粉を吹いたようになり、葉は枯れています。ミズナラやコナラなどに見られる現象で、カシノナガキクイムシが病原菌を伝播することによって起こる、樹木の伝染病です。年々、東北地方まで浸食が進み、対策が求められています。

 

 

 

 他にも色鮮やかな実をつけた植物や爽やかなにおいの葉を持つ植物など、短い時間で感動と学びの多い観察会になりました。

 

 次回は、浅虫の地形について、観察会で学んだことを報告します。

今回の自然観察会の内容をまとめた土曜セミナーを下記のように開催します。ぜひ皆さんお越しください。

 

土曜セミナー「浅虫自然観察会の報告」

●日 時:3月1日(土)13:30~15:00(受付開始13:00)

●会 場:青森県総合社会教育センター4階 第2多目的研修室

●講 師:青森県立郷土館 研究主査 原裕太郎

●受講料:無料

●定 員:40人(当日受付)先着順

 

(原 裕太郎)