令和5年7月7日に掲載した「そして、青森にたどりついた」というブログでは、「マダガスカルにたどり着いた人もいる」という形で終わりました。タイトルとの違和感を感じた方には、申し訳なく思います。

 私は、人類の移動と、定着した土地の環境に適応した生活文化を紹介することは、人間の可能性を示すことだと思っています。沖合に出ても、見る事のできないような遠くの島まで人が移動したことなど、語りたい事が、ありすぎたのでした。

 

 次の写真は、二足歩行をした約366万年前の人類の足跡です。タンザニアのラエトリ遺跡で、火山灰の下から掘り出された足跡のレプリカです(青森でも田舎館村の垂柳(たれやなぎ)遺跡では、火山灰の下から弥生人の足跡が発見されています)。

 思いがけずにフランスの国立先史博物館で見たときは、驚きました。

 

(以降の写真は、2005年筆者撮影)

 

 二足歩行の足跡は、博物館の入口にあり、導線を兼ねていました。

 足跡のうち左側は子供の、右側はその親のものと考えられています。

 その先には、足跡を残したアフリカのアウストラロピテクス属の人の復元像があり、博物館周辺のヨーロッパのホモサピエンス (新人:クロマニヨン人等)の遺跡と出土品へと続く人類の歴史が展示されていました。

 

フランス国立先史博物館(フランス西部;ボルドーの東、ペリグー市から近いレゼジー村)

 

 約20km南には写実的な動物の絵が描かれたラスコー洞窟(現在は保存のため閉鎖され、隣に再現されたラスコーⅡ洞窟が見学可能)があり世界遺産「ヴェゼール渓谷の先史的景観と装飾洞窟群」を構成する遺跡群の位置する場所にあります。

 

博物館の近くのフォン・ド・ゴーム洞窟(レゼジー;世界遺産)

 

洞窟の中に動物の絵がありますが、暗く、写真を撮ることはできません。

 

 

コンバレル洞窟(レゼジー;世界遺産)

 

 一方、アジアには、洞窟画ではなく、岩絵が残された遺跡があります。

 次の写真は、カスピ海に面した国、アゼルバイジャン共和国のゴブスタン遺跡と岩絵です。

 

(ゴブスタン世界遺産;約2万年前~5千年前 以降、2019年筆者撮影)

 

舟と人

 

動物と人

 

角のある大型動物

 

 話をアフリカに戻しましょう。

 タンザニアのラエトリ遺跡で、二足歩行をした足跡を発見したメアリー・リーキー氏は、その前に夫のルイス・リーキー氏とオルドヴァイ渓谷を発掘していました。

 

オルドヴァイ渓谷の博物館 (以降、1999年タンザニアで筆者撮影)

 

オルドヴァイ渓谷

 

渓谷の中のリーキー氏の顕彰碑

 

 渓谷なので新しい地層から古い地層まで露出しており、約200万年前から数十万年前までの石器や人骨が多数見つかりました。

 

 オルドヴァイ渓谷の近くには、ンゴロンゴロ保全地域(世界遺産)があり、火山のカルデラの中で野生動物を見ることができます。

 

 背後に写る山は、カルデラの外輪山です。

 

 十和田湖の湖部分が土に埋まったような場所をアフリカゾウが歩いていると表現すれば、イメージしやすいでしょうか。

 

 ンゴロンゴロ付近で会った女性と子供です。この地(タンザニア北部からケニア南部)は、マサイ族の人たちが住む地域でもあります。

 

 チャーターした車の運転手が、もしマサイ族に興味関心があるのであれば、セレンゲッティー国立公園(世界遺産)にいく途中でマサイ族の村を見る事ができると言いました。

 村では、子供の教育のために教師を呼びたいが、なかなか来てもらえないとのこと。

 そこで、村を観光客に見せて、資金を集めているとのことでした。

 私は、寄り道こそ素晴らしいと思う人間なので、村に行くことにしました。

 

出迎えてくれた人々

 

  

 マサイ族の男子が大切にする槍の隣に、ヒョウタンと思われるものがありました。

 ヒョウタンはアフリカ原産とされ、突然変異でクビレのあるものが出現する前は、すべてクビレがなかったと言われています。

 なお、縄文時代の青森市三内丸山遺跡からは、ヒョウタンの仲間の種子が見つかっています。

 

 

家とその内部。鍋がかけてありました。

 

 村を出た後で、振り返ると、子牛を連れた人が、村を出るところでした。

 マサイ族は牧畜民です。

 

 

 ホモサピエンスはアフリカを出て、まずは中東に住み、数万年前に、西のヨーロッパに向かった人もいれば、東に向かった人もいるそうです(諸説あり)。

 

 私は、アフリカから人類が世界に拡散する長い旅に出た話を始めると、長い話になることがあります。

 そして最後は、同じくアフリカを出たホモサピエンスの、肌の色の違いなんてここ数万年で生じたこと。なぜ気にするのだろう。

 一重まぶたは、アジアの北方に進出した人が、約3万年前の寒冷化に適応して出現したと言われています。

 世界的な宗教の成立は、さらに新しい。なぜ、宗教・宗派で争うのだろうという話になってしまうのでした。

 

 

引用・参考文献

ジェレミー・デルシヴァ著赤根洋子訳2022「直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』株式会社 文藝春秋

ルイーズ・ハンフリー/クリス・ストリンガー著 篠田謙一/藤田祐樹監修 山本大樹訳2018『大英自然史博物館シリーズ2 サピエンス物語』株式会社エクスナレッジ

 

(齋藤 岳)