2月の下旬になり、雪に閉じ込められた青森の街に降り注ぐ太陽の光も少しずつ明るさを増してきて、ようやく春のきざしが感じられるような気がしてきました。

 今回は多色木版画で鮮やかに表現された青森の冬の景色を紹介します。

 雪国の方々の雪かきで疲れた心と体にほっと一息つかせてくれそうな作品です。

 

 

 

 1枚目は、加藤武夫(1930~2012年)作の「春待つ長寿林檎樹」(1989年 25×22cm)です。

 背景に描かれている長寿林檎樹は、青森県つがる市柏桑野木田にある、明治初めに植えられた日本一古いと言われる林檎の樹です。この絵の作者 加藤武夫は、この樹に魅せられて、何度もここを訪れて四季折々の長寿林檎樹をテーマにした版画を制作しています。

 雪が降り積もったしんしんと冷える三日月の夜、白い長寿林檎樹と岩木山を背景にして、藁の上に置かれた2つの鮮やかなりんごの赤に惹き付けられます。

 

 

 

 2枚目は、加藤武夫作「冬日」(1989年25×22cm)です。

 赤い小さな実を付けた木立の奥から、冬の黄色いやわらかな陽が、手前のマルメロの実をやさしく照らしています。白い細かい雪がおおっている冷たさの中にも、ほんわりとした温かさを感じさせてくれる作品です。

 

 

 

 最後は、花田陽悟(1930年生まれ)作「回廊を行く」(2005年19×26cm)です。
 春の訪れを感じさせてくれる作品です。
 冬季閉鎖となっている八甲田・十和田ゴールドラインの酸ヶ湯~谷地間において、4月1日の一般開通直前に行われる「八甲田“雪の回廊と温泉”ウォーク」を描いています。
 このイベントは、高さ最高9メートルにもおよぶ真っ白な雪の大回廊8キロメートルを歩き、八甲田の雄大な大自然を体感することができるものとなっています。
 ダイナミックな構図で、雪の回廊の高さや八甲田の壮大な自然を表現しています。雲間からのぞく明るい青空の下、色鮮やかな上着を着て列を成して歩く人々の後ろ姿に、春を迎える喜びが感じられる作品になっています。
 新型コロナウイルス感染症拡大のため、昨年まで中止になっていましたが、今年は開催されるといいですね。
 青森県民が待ち望む春までもう一息です。(ナカムラ)