令和4年度の青森県立郷土館巡回展「あおもり旅ものがたり~青森の名所と交通の歴史」は、青森県むつ市のむつ来さまい館、青森県三沢市の青森県立三沢航空科学館、青森市の青森県立美術館を巡ってきました(最終会場の県立美術館は1月29日まで)。
今回は、本展にも展示しております「青森郷土かるた」についてご紹介します。
郷土かるたは、戦後の昭和20年代、全国各地で作られました。なかでも、群馬県の「上毛かるた」は有名です。この「青森郷土かるた」は、1950(昭和25)年に東奥日報社から発行されたもので、その内容について当館が詳しく紹介したのは、実は今回の巡回展が初めてでした。
ユニークな視点で描かれた絵札46枚と、リズミカルでありながら格調高い表現が印象的な読み札46枚が、県内の名所や名産品・主要産業などを、「かるた」を通して自然に学べるようになっています。その上、各読み札の裏面には解説があり、札をとったあとで、ちょっとした知識も得ることができる、もっと知りたいという気持ちにさせる、そんな仕様です。
絵札を描いたのは、青森県弘前市出身の画家下澤木鉢郎(1901~86年)。下澤は、棟方志功らと親交のあった本県を代表する版画家の一人です。読み札を担当したのは、東京都出身、仙台市で活躍した俳人で作家の杉村顕道(1904~99年)。杉村は、日本かるた協会の理事として、東北各地の郷土かるたに関わっています。
写真①
本展で紹介した「青森郷土かるた」の外箱(写真①)には、何度も開けられた形跡があるものの、各札は折れたり破れたりしておらず、比較的きれいな状態でした。きっと大切に保管されていたんですね。
写真②
それでは、中身の札を紹介します。
「あ」の札(写真②)。
読み札は「新雪(あらゆき)蹴たてて スキーの稽古 たのし大鰐 狐森」、裏面の解説は「大鰐町郊外、阿闍羅山麓。名高いスキー場。付近に大鰐、蔵館両温泉があり、冬季はスキー客で賑わう。」とあります。
描かれている人物の表情が不思議に気になる一枚です。
写真③
もう一枚「ぬ」の札です(写真③)。
何をとりあげたものでしょうか。ちなみに、この札の解説には「弘前市の特産。外観の華美を避け、優雅堅牢をむねとし、彩漆の陰顕が不規則な雲状をしているのが特色。材料の木地は、本県特産のひば材を用いる。」とあります。答えは、津軽塗。読み札は「塗(ぬり)は津軽の 雅びな漆器 雲形模様の おもしろさ」とあります。(K.O)