海辺の住宅街に住むその女はため息を付いて海とは反対方面歩き始めた。
背中でパンパンという乾いた破裂音のオーケストラを聞きながら駅に向かっているのだ。
きっと振り返れば夜の空を彩る花火が見れるだろう。
だが、決して振り返らない。
(くっそ、人はこれから仕事だっていうのに、浮かれやがって。)
頭の中で毒づきながら、冷たいマテ茶煽りながらホームのベンチに座った。
ふっと思い出したのは、去年の今頃。
おなじ、花火大会。
巻いた髪、いつもより念入りにした化粧、なれない浴衣。
「一緒に見よう。」
だが、その約束の相手は間に合わなかった。
その時も、彼女は見ようとしなかった。
だってこの花火は彼と見ると決めたから…。
去年は泣いていた。
(ううーん、苦い思い出)
感傷に浸っているとホームに鳴り響くアナウンスが現実に引き戻す。
これから戦地に赴くのだ。
花火終わりの居酒屋はまさに戦場。
リア充に、浮れた客。
だが、彼女は微笑むだろう。
「おまたせしました!ビールです!!」
ここまで、前フリ。
にぎゃぁぁぁあああ!!
リア充しねぇぇぇぇぇええ!!!!
くそぉぉぉぉおおお!
みんな真っ直ぐ帰れよぉぉぉぉおお!!
わかんねぇだろ!?
わかんねぇだろうな!!
この虚しさが、花火の音を聞きながら出勤する虚しさが!!
リア充しねぇぇぇぇぇえ!
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