壁を越えた釣り人たち | A Headbanger's Fishing Life

A Headbanger's Fishing Life

島根県西部を中心とした釣行記等。
Yahoo!ブログのサービス終了に伴い、こちらに移行しました。

福井県に敦賀新港という港がある。
 
サゴシ釣りの超有名ポイントであり、県内外から多くのルアーマンが集まる港である。
 
先日のメバル釣りの前、夕マヅメについでにサゴシでもと思い、新港を訪れた。
 
車を停めて歩く。「先端の方が良い」と聞いていたからである。
しかし、途中にフェンスがあり、大きく「立入禁止」と書かれている。
 
立ち入り禁止なんだーと思って、普通にフェンスの手前でジグをキャスト。
周りにはルアーマンは誰もいない…釣れていると聞いたけど…
 
しばらくすると、ルアーマンらしき人が来る。そして、何事もないようにフェンスをよじ登る。
フェンスの「向こう側」からも、続々と人が帰ってくる。
中には、ストリンガーに大量のサゴシを繋いで、ドヤ顔でこちらを見てくる輩もいる。
 
どうやら、常連はこれを乗り越えることに何の抵抗もないらしい。
よそ者の私からすると、「立入禁止」と書かれたフェンスを越えるという行為には当然違和感がある。
しかし、もはやこれは「ステータス」にすらなっているようで、本格的なルアーマンから、家族連れまで、みんなが慣れた様子でフェンスを越えていくのである。
イメージ 1
「向こう側」はご覧の通り。明らかに「こっち側」より多い。
 
そういえば、「ワインド釣法」で名を馳せた某メーカーの宣伝用VTRも、明らかに先端…つまり「向こう側」であった。某雑誌でも見た気がする。
夜に行った釣具屋でも、「手前じゃ釣れない」と言われた。
もはや、現地ではこれを越えるのに何の違和感もないのであろう。「みんなやってる」から。
関係当局も普通に黙認しているのだろう。
 
釣り場に立ち入り禁止区間が隣接しているのはよくある話である。私はやらないが、バス釣りなんかでは釣り禁止の池なんか結構ある。
そんな場所を、結構見てきたが、これほど意味をなしていない立ち入り禁止の看板を見たのは初めてである。
普通は、この看板をはじめて見た時の私のように「しゃーない。じゃあやめとくか。」となるか、仮に侵入しても恐る恐るーとなるのであろう。
 
よそ者の私が、件のフェンスを越えることの是非について論じるべきではないのかもしれない。
しかし、「立ち入り禁止の場所に立ち入る」という行為は、「○」か「×」なら当然「×」である。
そんなことは幼稚園児でも分かる。
だから、「僕は、皆が越えていても、敦賀新港のフェンスは越えません。」というのも、誰にでも言えることである。一般的に、どう考えてもそれが正しい。
 
家のPCの前で、「僕は絶対に越えません。」というのは至極簡単なことである。逆にそれ以外の意見を言う方が難しい。
しかし、現地に行ったらどうだろうか?
あの雰囲気の中に行ったら…?
何も釣れない自分を尻目に、フェンスの向こうから大物を持った人がぞろぞろとやってきたら…?
釣れている魚がサゴシじゃなくてヒラマサだったら…?
越えない自信があるだろうか?
 
私には…無い。
もちろん、壁の向こう側に行くことが、ただ立ち入り禁止区域に踏み込むだけではなく、釣り人として越えてはいけない「向こう側」行ってしまうことは分かっている。
だから、私はここで、いくらでも「僕は越えません。」という自信はある。
しかし現場では、どう魔が差すか分からない。少なくとも、PCに向かって文字を打っている私と、釣りをしている私は同じではないのである。
悲しい事実であるが、私は「釣り」というものが、自身をいかに狂わせるか分かっている。
 
現に、フェンスを乗り越えて大漁のサゴシを持って闊歩しているルアーマンを見て、何度か私の心は動いている。
恥ずかしながら、これは事実である。
だから、私は「釣り人失格」と言われようが、仕方ないのである。釣りの最中に理性を保てないような者が真の釣り人であるはずがないのだから。
ただ、私の「釣り人」としての面でもまだ僅かに残されていた理性、「壁を越える」ことは出来なかった
サゴシを釣るのと引き換えに、釣り人として大切な何かを失うのが怖くて、勇気が出なかったのである。
 
だから決めた。もう新港には行かない。
現地の空気に飲まれて、目の前の魚の欲に負けて、釣り人として「向こう側」に行かない自信がないからである。
何度も言うが、現場にいなければ自信を持って「越えない」と言える。だから、行かなけりゃいい。
 
ちなみに、メバル釣りが終わった翌朝も顔を出した。
壁は越えない。というか、あんなメバル釣りをしたら、越えるリスクを考えるのも馬鹿らしくなったのだろう。
その朝は絶不調だったようで、壁の向こうから来た人も「全然ダメ」と言っていた。
そんな中、横で一本釣った先輩。
イメージ 2
血を抜くため、リーダーにサゴシをくくりつけて、海にチャポチャポやってる先輩は、壁の向こうからやってくる、ストリンガーを肩にかけたルアーマンよりずっとカッコ良かった…
 
 
※知恵袋にこの記事のURLを貼ったため、コメントを承認制にしてあります。