- それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One.../講談社
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ドイツ人として暮らす楽器職人:グアトの元に、金髪、碧眼の一人の男が訪ねてきた。背中に、刀を縛り付けたリュックを背負ったその男は、デミアンと名乗り、ロイディという名のロボットを探していると言う。外には、彼を狙う政府の組織の者が三人。「この世で、また会いましょう」の言葉を残して、デミアンは出て行き、外には、三体の死体が残された。その後、ドイツ情報局の捜査官:ヘルゲンが、事情聴取に訪れ、彼からデミアンは極秘に開発されたプロトタイプの戦闘用ウォーカロンで、長らく行方不明になっていたことが知らされる。
新シリーズ「WWシリーズ」第一巻目。
最初、グアトは、先生の子孫かなぁと、ぼんやり考えていました。
でも、「Wシリーズ」では、もう子供生まれなくなってるから、祖先?
いやいや、違った。
人間が死ななくなって久しいから、本人でした。
ちなみに、グアトの年齢は、75歳から95歳の間と判明。
パートナのあの子も健在で、二人して名前を変えて、ドイツで隠遁生活中。
彼女の今の名前は、ロジ。
ロジの身分は、嘱託職員みたいなもんかなぁ。
で、日本からやって来るロジの妹:セリンが、ロジのかつての部下のあの子。
セリンは、変わらず在籍中。
やっぱり、二人して、彼を守ってます。
手抜きというか、「Wシリーズ」の続編ですね。
新しく覚えなくてすむから、楽ちんだけど。
誰も死ななくなって、未来は永遠に引き延ばされ、揺らがない安定した社会になりつつあるその時代に、新たなタイプのウォーカロン:デミアンが登場。
彼は、なぜか「ロイディ」という名のロボットを探しています。
ひぇ~、こんなとこに出てくるなんて。。。
ロイディと言えば、ミチル。
ミチルと言えば、マガタ・シキ。
どんどん過去作と繋がっていきます。
特に、「百年シリーズ」のミチルと、シキの娘:ミチルの微妙な齟齬が気になっていただけに、今作でざっくり説明されているのに納得しました。
まぁ、無理やり感は否めませんが。
この先、犀川先生とも繋がったりして。。。
そして、トランスファも、私の非理系頭ではイマイチ理解できてなかったのが、すっきり。
でもないか。
世界をひとつの脳だと仮定して、ニューロンにあたるという説明で、なーんとなく理解できました。
あっ、悪魔あくまで、なーんとなくね。
新シリーズスタートのサービスでしょうか、前シリーズから続けて、ボッシュ博士に助手のペイシェンス、ナクチュの区長:カンマパに、眠れる王子:ジュラと、彼を殺したとされるジャン・ルウ・ドリィ・モレル・マイカ・ジュク(フルネーム長っ!)に、オーロラまで登場です。
舞台も、ドイツからチベット、そして、トウキョーからミヤケ島へ。
なんと、ミヤケ島に、別荘持ってたんですね、モレル。
トウキョーで保管されていた王子の身体を盗んだデミアンを追って、グアト、ロジ、セリンの三人とヘルゲンはモレル邸へ。
引退しても、やっぱり、事件に巻き込まれてるよ、センセ。
さすがだわ。 ← これ、褒め言葉ね。
マガタ博士から、一目置かれるだけあります。
というか、巻き込まれるのは、マガタ博士が、彼にご執心だからなんだけどね。
物語は、まんまとミスリードに手を引かれ、意外なエンディングに、脱力しました。
へっ?
そうくるかい。
でも、いいの。
キャラで読んでるから。
とは言うものの。
戦闘用ウォーカロン:デミアンの相手からの攻撃を感知して初めて攻撃に移るというプログラムに重ね、正当防衛についてのグアトの疑問には、ドキリとしました。
ここで、それ言う?
相手がミサイルを発射した場合、そのミサイルや発射基地を攻撃することは防衛と見なされる。
では、相手の指揮官が指令を出したことを察知して、先制攻撃を仕掛けるのは許されるのか。
などと、既に過去となった現代?を例にだして、正当防衛成立時を自問しています。
なら、眼差しで通信できるオプションが欲しいというグアトの言葉に、”阿吽の呼吸”とか”以心伝心”なんてのが、かつてあったのを知らないのと、ツッコミいれてみる。
そして、そんな”腹芸”を見破って攻撃した者は、正当防衛と見なされるんだろうかってね。
まぁ、科学者だから、そうゆう非科学的なのは認めないんだろうな。
でも、そんな科学的に証明できないあやふやなところが、人間の強みなのではとも、思うのですよ。
機械には難しいよね。
でも、彼らも学習するからなぁ。
否、そもそも、人間の脳も持つウォーカロンは、ウォーカロンなの?
不気味の谷を越えて進化していくウォーカロンや、トランスファに、しっかり先を越され、子供が生まれなくなった人間に、やはり未来はないのか。
彼らが、ますます人間以上に人間らしくなっていき、人間以上に正しく生きていく世の中になったなら、ヤバいんちゃう、人間。
ちょっと心配。
心の狭い私は、それもまたよしと思うグアトのようには、まだまだ割り切れないなぁ。
いつまでも、ヒエラルキーのトップに君臨できるはずもないのだけれど。。。
「あのように撃ち合わなければならぬのは、何が不足しているのでしょうか? お互いの理解、愛、それとも、血ですか?」