タカイ×タカイ  森博嗣 | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

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その死体は、真鍋瞬市が大学へ向かう道路から見えた。道路沿いにあるマジシャン:牧村亜佐美の屋敷の庭に立てられたポールの先端に掲げられていたからだ。被害者は、牧村のマネージャ:横川敬造。ワイドショーでは、牧村の師匠に当たる仮面をつけたマジシャン:鷲津伸輔との三角関係が取りざたされ、真鍋も事務所で小川令子と無責任な謎説きに興じていた。誰が何のために、十五メートルはあろうかと思われるポールの天辺に死体を据えつけたのか。探偵:鷹知祐一郎が、事件に関わる調査依頼を引き受けたことにより、真鍋も小川ともども、事件の真相を探ることになる。




「Gシリーズ」の図書館待ちの時間を利用して、「Xシリーズ」の続きに手を出してみました。
今回は、いつもよりは理解しやすかったです。
一応、頷ける解も用意されていましたしね。
でも、相変わらず言いたいことはそこじゃないな。


高いところで死体が発見される事件といえば、ひらめき電球Gシリーズの『ηなのに夢のよう』 です。
私が連想できたくらいだから(実は、連想できるように作者が書いてるんですがあせる)、当然、関連を疑った公安から萌絵サンダルに呼び出しがかかり、彼女が牧村邸を訪れます。
そこへ、野次馬根性丸出しで見学に来ていた小川令子が、彼女を見つけ……。


はぁ、こういうのがあるから、シリーズ順に読むべきなのか。汗

重ねて椙田情報で、萌絵の伯母が愛知県知事夫人だということが判明。
『τになるまで待って』 の佐々木睦子のことかな。


このあたりは、なんとかセーフ。チョキ
でも、また新たな謎がひとつ出現。

マジシャン:鷲津伸輔が、本名は宮崎と言って、萌絵と既に面識がありました。
宮崎って誰?
やっぱ、事件絡み?
それにしても、偽名を使う登場人物多すぎです。ドクロ


結局どこまでいっても萌絵ワールドなのか。ガックリ



そして、今回もやはりテーマは「殺人」及びその行為者である「人間」についてのようです。


「小川×真鍋」による「計画的殺人についての絞殺考察」は、すごく納得しました。

真鍋曰く、計画できるほど冷静なら、殺す前に合法的に相手に嫌がらせをする方法を選べばよいではないか。
自分の残りの人生を棒に振るようなリスクを負うべきではない。

対する小川の「感情と論理的思考は別物」の言葉に、CPUが二つあるのかと納得する真鍋。
なるほど、人間の脳はCPUか。
だったら、2つではカバーできなさそうだけど。。。



「人間」についての「萌絵×真鍋」。

本
「真実なんて、誰にもわからない」
「みんなが、自分が認識していることを正直に話しても、それは真実ではない。認識が間違っている可能性は常にある」


そうなんだけどぉ。。。
それを言っちゃあ、お終いでしょ。

人の数だけ真実がある。
だから、今回も、一応の解決をみるのですが、それも他人事でしかない突き放した結末。
実際、他人事ですけどね。


次に、「真鍋×小川」で最後のダメ押し。

<そもそも一つの理由だけで決まっているものではない>人間の行動を、<動機はこれこれなんだとか、いちいち理由を決めて、そんなの間違っているとか、納得がいかないとか、議論すること自体がおかしい>
と言うのが真鍋くんの意見。

そうだよねー。
傍から関係ない人が、ごちゃごちゃ言ってもしかたないよね。

でも、この世の中は、そういうのが好きな人がうようよ。
ワイドショーが廃れない理由です。

それに、私たちは読者なんだゾ。むかっ
と、存在理由を問うてみる。


そして、極めつけは「真鍋×小川」のこれ↓

本
「鈍感だからこそ、ここまで、地球を支配できたのかもしれない」
「あ、そうか、鈍感だから、周りを気にせずに、その分よけいなことを考える暇があったんですね。だから脳が発達したんだ」



そう考えると、おせっかいで、鈍感って属性も、そんなに悪いことでもなさそうですね。
このあたりが、天才科学者:四季との接点になっているのかも。

愛すべき生物:人類の未来に栄えあれ!カクテルグラス