Aokotarot番外編

お盆なので、深夜にひっそりショートな怪談など。

3年前くらいに書いたものです。

 

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私の住処には、人ではないものも住んでいる。 

ちょっと居らないオプションだ。

 


キッチンで作業をしていると、ソレがものすごい近い距離に来る事がある。
と言うか、よく来る。
私はそれが堪らなく厭だし、怖い。

誰か分からない何かが居るなんて、怖いでしょう。いや、分かっても怖いか。

 

私にはソレの姿形は見えず、ソレの気配を感じ取る事しか出来ないから

近くに来なければ何をしていようが、私は一向に構わないのだけど
近くに来られると全身にザァーと鳥肌が立つので堪らない。

 

ものすごい近い時は「ちょっとアンタ近い」と窘めるのだけど、ソレは全く気にもとめないようで
「なんやアンタいい加減にしいや。イヤやって言うてるやろ。」
と本気を出して怒るとスッと居なくなる。

 

やれやれだ。 生きてる時も距離感が分からず、ちょっと近い近い!とかって怒られてた人なんだろうか。 学習してくれ。

 

ある時、私の傍に来るソレが、実際にはどの位近い距離まで来ているのか実験してみようと
何となく思い立った。
ものすごい近くに来る、とは分かっていても、実際にはどの位近くに居るもんなんだろうと。

そこで旦那さんに事情は話さず
「左斜め後ろからゆっくり近づいて、「ハイ」の合図で止まって貰っていい?」
とお願いした。


左斜めはいつもソレが来る方向。
「ハイ」の場所がいつもソレが居る、ソレの気配の場所。

「行くよー」
「はーいお願いしまーす」

「ハイ」と声をかけて左を向くと、旦那さんの顔が直ぐ目の前にあった。
ザザザァーと鳥肌が立った。

 

 

 

 

 

幾らなんでも、それは近すぎる。