「最近元気ないね、智くん。
研修担当大変?」
「いや、今年の新人くんたちは
なかなかのみこみもはやいし
教えがいもあるよ。」
「じゃぁなに?」
「…好きな人がいなくなった。」
「はぁ、いつの間に
付き合ってたの?」
「俺の片思い。」
にのちゃん先生との出会い、
突然の別れを話した。
「へぇ~そうなんだ。」
「どこの幼稚園に
いったんだろうなぁ。
住んでるところ聞いておけば
良かった。」
「園の先生は知らないの?」
「個人情報だからって
教えてもらえなかった。」
「手がかりなしだね。」
「斗真の話だと、お遊戯会には
見に来るって約束してるって。」
「そのお遊戯会はいつ?」
「12月。」
「そのときに捕まえるしかないね。」
「あと…、実家と父さんの工房が
借金の抵当になってて…。
斗真が俺との生活に馴れるまでは
環境は変えない方がいいと思って
実家に住んでたけど…
引っ越さなきゃなんだよな。
やっぱり通勤時間のこと
考えるとなぁ。
斗真には悪いけど小学校入学の
タイミングかなって思ってる。」
「俺、不動産やってる友人が
いるから小学校のこととかで
聞いてみようか。」
「助かる。俺と斗真の部屋が
あったほうがいいから
2DKくらいで探してもらえる?」