Q23 英検2級の再受験についてお尋ねします。娘は附属校で新高2です。中3で準2級を取り、成績は10段階評価で9でしたが,高校に入ると英検2級は2度不合格で、成績は7になりました。娘は、高校から教科書も急に難しくなった気がして、覚えてもすぐに忘れてしまう。英検2級の長文は量が多くて時間が足りない。と申します。親としては、自信を取り戻しまたチャレンジして欲しいと思います。本人を励ますようなご指導をお願いできませんか。
 
A 伸び悩みの原因が何か、どのように鍛えなおせばよいのかを本人が自覚することが第一です。また、塾を変えても先生を変えても、家庭での勉強法が中学の時と変わらなければ、成績の伸びは、期待できません。何から始めればよいか。私は英文の音読の習慣付けだと思います。授業中は生徒に英文を声に出してしっかりと読ませます。いきなり2級レベルの長文はきついという生徒には、100語程度のやさしめの長文から始めます。数多くの長文を読み進めてゆくうちに、英文に慣れて語彙力もつきますし、一語一句の和訳にこだわらず、意味のまとまりで区切り、そのつながりで内容をとらえてゆくようになり、英語のまま英文の内容がつかめるようになります。声に出して読むのが苦手という生徒には、ゆっくりめのリスニング問題のCDを聞きながら、ネイティブの先生の読み方をまるごと真似て、テキストを見ながら先生と同時に読んでみるようアドバイスしています。しだいに英語のリズムやイントネーションが身につき、このリズムのおかげで、英文が読みやすくなり、読んだことのない英文にも、スッと入ってゆけるようになります。絶えず英文を音読する習慣を身につければ、文構造や文の仕組みがわかってきますし、英文はひとつの情報や意見を伝えるため、まるで語句が互いに助け合ってるかのように思えてきます。知らない単語が出てきても、周りの語句から意味を推測しますし、さらに、次にどんな語句が来るか予測できるようになります。大体は前の語句を受けて、より詳しく説明し、支える語句が続きます。私は生徒に、長文を読む際は、すぐに辞書を引かないで、最後まで読み終わってから、徹底的に調べるように指導しています。手に馴染むくらいに辞書を引いて調べるようになると、英文を読みながら、和訳しなくても英文のまま内容が取れるようになります。よし、このレベルの英文はもう大丈夫。と終わりにしないで、私はさらに繰り返し音読するようにすすめています。無意識のうちに、音読が、本来覚え込むべき箇所のまだ覚えてないところを補強してくれていたことに、後になって気付きます。そのよい例が学校の教科書です。丸暗記するつもりで音読してテストを受ければ、思った以上に高得点がとれることがあります。また逆に、全訳をして重要なポイントを整理してテストを受けても、思ったほど得点が取れないことがあります。教科書本文の仕込み不足が原因です。やはり、日々の音読に勝る勉強法はない。と実感できるはずです。家庭での勉強法を音読重視にすることで、定期テストの得点が伸び、英検2級に向けて再チャレンジの意欲が復活し、今度は計画を立て、実行力が伴いますので、着実にステップアップしてゆきます。
次に、すでに英検準2級を取得し、英検2級を目指す生徒には、自分の英語力を2級レベルまで引き上げてから過去問を解いたほうが、手応えがありますし、効果的です。そこで私は、市販の大学受験レベルのCDを用いて、同時に音読による長文演習を行います。ネイティブの先生の声が、一切の甘えも許さないペースメーカーとして働き、一気に2級レベルに引き上げてくれます。毎回の長文は200語くらいで、1分半くらいで読まれます。普通よりもゆっくりめに読まれますが、テキストを見ながらでも、始めは単語を飛ばしたり、間違えたり、読めなかったりします。私は、気にせずに最後まで読み通すように指導しています。家庭で丸暗記するつもりで同時に音読を繰り返してゆけば、次第に先生の声についていけるようになり、落ち着いて集中して読めるようになり、大学受験レベルの長文に慣れてきて、勢いがついてきますし、リズムに乗って読めるようになります。しかしほんとにわかって読んでいるのか、同時音読は、自分の仕込み不足を洗い出し、努力目標を明確にするのに最適の勉強法だと思います。どこをきたえたらもっと自分の英語が伸ばせるのか、同時に音読でわかります。単語力が不足、構文、語法が見抜けない、過去と完了形、関係詞、準動詞あたりの文法理解が不十分。など、課題山積のように思えますが、弱気にならずとも、勉強法を工夫することでこの課題は克服できます。文法は、本人が苦手なところを中心に十分な演習と解説で弱点補強を行います。
単語、熟語は、同時に音読をしながら仕込んでゆくほうが話の流れを利用してむしろ効果的に仕込めます。たとえば、ingenious(発明の才のある)は単独で覚えるとすぐに忘れてしまいそうですが、長文の中で、He is an ingenious manと出てくると、どんな?なぜ?と問いかけたくなります。次の文から詳しい説明が続くと、なるほどと納得するだけでなく、その説明のために使われたinvent(発明する)improve(改良する)develop(発展させる)などの単語を同時に整理することできます。授業では同時音読を行ったあと、どんな語句が出てきたのか生徒と検証するようしています。その際に、今回初めての語、何度か出てきたがまだ覚えていない語をチェックして書き抜くなど整理するように指導しています。またこの授業が元になって、自らも仕込んでいきたいという生徒の要望があり、従来の単語集の範囲を決めてテストをする代わりに、その単語を含む英文を100題ほど読み合わせを行っています。たとえば、extraordinary(並外れた)は単独で覚えるとすぐに忘れてしまいそうですが、関連のある語とくっつけて、He  has an extraordinary talent.というふうに文にして覚え込むと、extraordinary talentという部分がしっかりと定着します。また単語の数が増えていくと、adapt(適合させる)とadopt(採用する)のように、よく間違えてしまう単語も増えていきます。覚えにくい単語は、単独で覚えるより、辞書を引いたりテキストのその部分を書きぬくなどして、その単語と関連の深い単語をくっ付けて覚えるよう指導しています。自分で覚えやすいように整理して、毎日繰り返し復習してゆく勉強法を身につければ、長文に出てきてもきちんと区別できるようになり、英検2級の語彙力に到達することができます。
最後に、英検2級の長文問題は、過去問を解くことが一番の予想問題になり効果的だと思いますが、問題文を全訳し、それから設問を解いてゆくとかなりの時間がかかります。そこで授業では、各長文ごとに目標時間を設定し、時間内に解くという演習を積み重ねてゆきます。またその際に、各長文問題の語数、設問数、出題傾向を把握して、どのように対策を施すか工夫することで所要時間を大幅に削減することができます。詳細はまた授業中に述べますが、長文問題は、過去問を解けばわかりますが、ほぼ段落ごとに順番に設問が用意されているように思います。そのため授業では、一段落読んでは、一つ設問を解いて、また次の段落と、順々に進めてます。そのうちに慣れて、問題文中の語句が、選択肢ではイディオムや他の表現に言い換えられているなど、解き方の要領を心得てくると、生徒は先に問いと選択肢を読んで、答えの箇所を見つけようとして、問題文のその段落を読もうとします。先に選択肢を読むと、解こうとする意欲や集中力が全く違ってきます。しかし偶然に正解したのではないか。私は生徒に、ただ解くだけでなく、他の選択肢のどこが間違えか説明させるようにしています。こんなこと書いてないとか、書いてある事柄が逆とか、相手との立場が逆とか、自分の言葉で説明することで、内容が整理できますし、話の流れが確認できます。この演習を積み重ねてゆくことで、正解はやっぱこっちだったか。というような余裕が生まれ、楽しんで解くようになりますし、今度は、絶対に全問正解にしてやるという意気込みで全力を出しきるようになりますので、スピードも正当率も次第に上がってゆき、目標時間内に解けるようになります。
 またこの演習を通して私が強く感じますことは、読めば読むほど、生徒の中に自ずと探求心が育まれてゆくのではないかということです。世界中の国々や地域で行われている珍しいイベントや新しい科学的な試みや最近勃発した新たな問題に真剣に取り組もうとする政府の姿などのさまざまなテーマを読んでゆきますと、世界の出来事に興味関心が高まってゆき、日本でもこんなことやればいいのに、と解き終わった後で感想を述べてくれる生徒もいます。この、世界の今をもっと深く知ってやろう。そのためにどんどん英文を読んでやろうという探求心こそが、英検2級取得にとどまらず、さらなる高みを目指して、英語を伸ばしてゆく原動力になってゆくものと思います