Q28  私立男子校新高3です。共通テストについてお尋ねします。そちらではどのような対策をされてますか。息子は中学生の時は、文法が得意で父親とよく勉強していましたが、高校に上がると以前ほどできなくなりました。特にリスニングが苦手になったようです。父親は国立大卒で金融関係に務めておりますが、勉強法のアドバイスをしようとすると、息子は自分には自分のやり方があると言って聞く耳を持ちません。最近では父親とのいさかいが絶えず、父親は「実力もないくせにプライドだけが高い奴が一番使いものにならん」と容赦ありません。(私が、現在塾に通っていますか。家庭学習は自主的にやってますかとお伺いしたところ)本人は国立志望で、学校と塾の勉強で手一杯の様子です。リスニング対策について今の塾の先生にお伺いしたところ、その塾では英文法と英文解釈と単語熟語テストで年間カリキュラムが組まれており、リスニングは市販の教材等で生徒各自で対策してほしいというお考えでした。また学校の三者面談で先生から、英語の成績が不安定でムラがある。いい時はいいのですが。とご指摘いただきましたが、その原因は、本人の実力なのか意欲なのか勉強法なのか、わかりません。私(母親)は、リーディングが不安定でリスニングも苦手のままで受験本番を迎えても決してよい結果にはならないと思います。そこで今の塾はそのままで、そちらで弱点補強をしていただき、リスニングの対策と難しい長文だと手が出ないという苦手意識を取り除いていただければと思いますが、いかがでしょうか。 

  A  お引き受け致します。国立理系は科目負担が多く、また秋以降は、学校も塾も答案作成演習など、より実戦的な授業になるため当塾に通う余裕がなくなるかもしれません。むしろこの夏あたりまでの約半年間と割り切って通っていただいたほうが、リーディングもリスニングも解くコツがつかめるかもしれません。しかしその前にお父様との関係を修復させ、味方になってもらったほうが良いように思えます。最近では、お父様がひょっこりと勉強中に入ってくるという話を生徒からよく聞きます。2つご紹介しますと、まず高1男子生徒が自室で英語の教科書の予習をしているところに、お父様が「ちょっといいか」と入ってくるなり「何やってるんだ」と覗き込んできて「ちょっと最初っから読ませろ」と言って読み終わると、「そうか、よし、わかった。その調子でがんばれ」と言って出ていかれようとするので、「わかってんだったら教えろよ」と本人が言うと、「自分で考えろ。それが勉強だ」と言ってドアが閉められそうです。生徒が予習していた内容は、宇宙ゴミに関するもので、なぜ宇宙ゴミが出るのか。解決策としてどのようなことがなされようとしているのか。教科書をまとめて来るのが学校の宿題だったそうです。それからしばらく日をおいて、お父様から呼ばれてテレビの前に座ると、宇宙ゴミに関する番組が始まったところでした。それ以降しばしばNHK特集やBSの番組をお父様と一緒に見るようになったそうです。一人で見るよりもお父様と見たほうが、たぶん理解が深まり知識として深く定着するように思えます。最近ではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の番組を一緒に見たそうです。「どんな内容でしたか」と私が質問すると、TPPの成り立ちとこれまでの経緯、今後の課題がまとめられた番組で内容をかい摘まんで説明してくれました。このような時事問題に興味関心を持ち慣れ親しんでおくことは、視野が広がりますので、いろいろな考え方があることが容認できます。そして相手の立場を理解できたり、論理の流れ、展開に自然についてゆけるようになり、詳しく知り深く考える柔軟な思考力を養成します。またテストの際に初見の英文で、時事番組を視たり新聞記事を読むように、どんなことが書いてあるか読み取ってやろうという勢いをつけることに直結するように思えます。
もう一つは、中3女子生徒で自室で勉強していると、お父様が「連休の予定のことでちょっといいか」と言って入って来ると「ほぅ現在完了か。昔やったなぁ」と言うので、たまにはパパと勉強するのもいいかと思って「現在完了の用法の区別がよくわからない。パパ教えて」と言うと、その言葉を聞くとすぐさま食卓から椅子を取って、さっと戻って来ると、「待って」という間もなく隣に座ってパパとの勉強が始まったそうです。ところが「青木先生は、ポイントを言ってから説明してくれるから分かりやすいけど、パパの説明には順番というものがない。だからやたら長い。もういい。もう聞かない。でもパパと勉強の話ができてよかった。特にパパの学生時代の話は楽しかった。でもラインもスマホもない生活は私には無理」と言うので「またパパを自室に呼んであげたらどうですか」と私が提案すると、「それ却下。そうだ、それよりここの塾に呼べばいい」と言ってうまくかわされてしまいました。

 話を息子さんとお父様との関係に戻しますが、結果を出せないじれったさは、受験生なら誰しも持っている気持ちだと思います。周りの生徒には負けない自信があっても、なぜトップグループと差がついたのか、トップグループの生徒は今どんな勉強をしているのか、どのようにしたら追い付けるのだろうと悩みは尽きないと思います。お父様は、高校時代にはおそらくトップグループにいらしたのではないかと拝察いたします。そこでお父様が共通テストの問題を息子さんの前で解いてみせられたらいかがでしょうか。ポイントは80分の時間の使い方です。お父様なら、どこに時間をかけ、どんなふうに解くかやってみせることで、効率的な解き方の具体的な例が目の前に示されることになりますので、本人にとっても必ず得るものがあると思います。これまでの解き方のこだわりを捨てるには、これが一番効果的です。息子さん本人の考え方が入ってないため、新しい観点から問題が解かれてゆき、これまで気付かなかったことが見えてくるはずです。しなければならないことを先にせず、しなくてもよいことをして時間を浪費していたことに気付くでしょうし、速く読み速く解かねば時間がないという焦りが却って逆に迷いを生み時間を浪費していたことに気付くはずです。おそらく誰が解いても全部を丁寧に和訳している時間はありません。私が推察するのも恐縮ですが、お父様は、速読するところと精読するところを使い分けるなどの何らかの読解術をお持ちのことと思います。一方でお母様の話から察しますと、息子さんは精読にこだわるため、設問数が多かったり問題文が長かったり難しかったりした場合は、時間に押されて納得のゆく答案ができなくなるように思えます。お父様が効率的な解き方をやってみせ、伝授することにより、息子さんにはスマートな解き進め方が身に付くはずです。そして最後に「父さんは最後まで逃げずにやり抜いた」と一言添えていただければと思います。その言葉がどれほど本人を励まし勇気づけやる気にさせるか、はかりしれません。お父様がいつも見守って相談相手になってくだされば、これほど強い支援はありません。問題の解き方も、まず設問を見てそれから問題文を読むなど、例えばこの1題を15分で解くとしたらどう解くか、というような解き方になると思います。解き方を変えるだけでこれまで苦手とさえ思えた英語長文が、楽しくなりまた最後まであきらめないねばりが出てきます。高3になってから偏差値を上げるのは大変ですが、楽しく解くようになると、このねばりが効いて残り時間を集中して解きますので偏差値の伸びが期待できます。

次に共通テストにおける当塾の指導の特色についてご説明いたします。Q27と重複するため、それ以外の内容を申し上げます。
共通テストで注目すべき点は、リーディングとリスニングの配点比が大学によってまちまちであることです。センター試験に比べてリスニングの比重が高まりました。もはやリスニング対策無しでは合格点に達しません。しかし別々に対策をすると時間も要しますし非効率です。当塾では、少しずつでもいいので毎日英文を聴きながら読むように指導しています。よく「習うより慣れよ」と申しますが、真似て慣れて自信がついて余裕が持てるようになれば、聞き取れて、英語を英語のまま理解することに一歩近づきます。その土台となるのが音読です。
当塾では、1対1の特色を生かして問題文の音読を重点的に行います。その理由は、問題文で疲れない読み方を心がけ、落ち着いて解く時間を確保するためです。我流で勢いで速く読むのではなく、英語のリズムで読んだ方がむしろ速く読めますし疲れません。加えて、英文の内容も頭に入ります。英語のリズムを身に付ける効果的な方法は、シャドーイングです。例を挙げて説明しますと、進学校の中3男子生徒が「シャドーイングは毎回授業始めにクラス全員でやっている。家ではやってない」と言うので、後日たまたま振り替えで授業が彼の前になった付属中の中3女子生徒に残ってもらって、2人とも教科書が同じですので、彼が入室してきた時、あるページを読んでもらいました。丁寧にゆっくりと読んでくれました。彼の方は驚いた様子でしたので、彼女にさらに少し前のページを読んでもらいました。「読めるかなぁ」と言いながら、黙読してを読み方を思い出したようで、教科書を見ながらはっきりとした口調でしっかりと読んでくれました。「私は、この内容を十分に理解していますよ」という自信が伝わってくる読み方でした。シャドーイングするとリズムで覚えますのでそのリズムを思い出します。おそらく覚えていた英文は、自然と口をついて出て来たのだと思います。リスニングの場合は、その逆で頭が自然と聞き覚えのあるリズムを探すのではないかと思います。テストで「これならいける」と思う瞬間は、聞き取れると思うだけでなく、ついていけると自信を持った瞬間です。普段からシャドーイングをする時、発せられる音の高低とか長短とか強弱とかを意識しながら丸ごと真似る�
�もりでシャドーイングすると、自然と英語のリズムが身に付きます。
彼女が退室後、彼と英語のリズムについての話になりました。
私は彼に「無理強いはしないけど論より証拠とも言うし、しばらく自分に合う方法かどうか
試してみて、判断したらどうか」とアドバイスしました。それから彼の本気のシャドーイングが始まりました。彼は「読めば読むほど読み易くなる」と言った通り、彼女に倣って誰かに読み聞かせるが如く、ややゆっくりの速さで間を取って読むようになりました。英語のリズムを意識することが長文読解にもリスニングにも役立つと納得できれば、さらに多くの長文をシャドーイングして、読み込んで自分の英語力に磨きをかけてゆくことができます。よく英語を英語のまま理解すると申しますが、我を捨ててありのまま英語に任す姿勢が伸ばす秘訣であると思います。なぜなら余裕が生まれ、考えながら先の展開を予測する予測読みができるようになるからです。
この予測読みが速読術につながり、設問に答えるための時間に余裕を持たせます。私はリーディングもリスニングも一体のものと考えます。よく英語4技能と言われますが、与えられた英文なら、読む=聴くですし、自分で作れば、書く=話すです。読むも話すも口を使います。頭に浮かんだ英文をすぐに口に出す。CDを聴きながら長文を何度も読んで頭に叩き込む。英文法の例文を何度も口に出して書きながら頭に叩き込む。口と手と頭を同時に使うことで、発信も受信も1つになり4技能は1つの勉強法で身に付きます。

もし当塾で息子さんをお預かりすることになれば、長文集を用いてシャドーイングを指導します。それぞれ標準とやや遅めの2種類ありますので、やや遅めの方を使います。また英検2級と共通テストのリスニングも速さを変えてシャドーイングとしても活用できます。さらにシャドーイングをやってると英作文が強くなります。頭にひらめいたらすぐ口に出す。書いてみる。読めば読むほど、聴けば聴くほど、そのひらめきは冴え渡ります。ピンとくる直感、場数を踏んだ経験からくる直感こそ武器となる英語力です。
最後に、ただ1つ難点がありまして、シャドーイングは、かなりの時間を喰われます。そこで慣れて要領がわかれば、家庭で毎日行い、塾では音読してもらうようにしています。シャドーイングしてきたことの発表の場を用意してあげることが、確認と次の目標設定になります。力がついてくると、英語表現が口をついて出て来るようになり、さらにこれまで仕込んだ英語を使ってみたくなります。口を使えば英会話ですが、私は英作文の問題を解くように指導しています。与えられた条件に対してどのような英文を作ればよいか、通じる英語、使える英語とはどのような表現なのかがわかってきます。解答解説を読みながら自分の表現を改め、新たな使える表現を学び取ります。さらなる高みをめざし、着実にスキルアップ、ブラッシュアップされていることが、今実感できます。