
エステティシャンである涼花さんの手が一瞬止まった。
私の左の乳房の下にKのつけた傷跡を見つけたときだ。
「もしやあの、Kさん、ご存知ですか?
以前、N賞のレセプションパーティで
お話しされてらっしゃるのをお見かけしたように思ったのですが。」
ーあぁ、それは奥様とお話ししていたのでしょう。
私は懸命にゆっくり、できるだけ静かに、答えた。
それでも、全裸の身体はどこか紅く火照ったのだろうか。
業界で有名な女誑しのKとの情事は絶対に秘密にしなければならない。
尻軽で色狂いのおばさんにされてしまう。
Kに愛されるようになって私は敏感になった。
愛撫されるごとに女オンナっぽくなり、つややかにぬめるようになった。
その身体を涼花さんの前にさらしている。
「お客様のお身体の声が聞こえるのですよ。マッサージをやってますと。
恋をされている方の身体はすぐにわかりますの。」
ーなんだかとっても眠いし、それに手足もしびれてきたようだわ。
「お客様。マッサージの前にお出ししたハーブティーのせいでしょう、
きっと。」
ぼーっとしていく頭に中にKの言葉がグルグルまわる。
── 瀟洒なエステサロンをやっているとか聞いた。
どこにでもいるフツーの女さ。手を出したのは気まぐれだったのだろう。
男には時としてそんなことがある。
ただちょっと、嫉妬が度を増しているというか……。
奥さんはいいのよ、もう愛してらっしゃらないのがわかるから。
でも、他の女に本気になるのだけは許さない、と。怖い顔して睨むんだぜ。──
「お客様にサロン特製のお顔のパックをしてさしあげますわ。
はじめだけちょっとぴりぴりひりひりくるかもしれませんが、
ご心配はいりませんわ。」
ーびんかん肌だから私は、、、、
もうモノも言えなくなった。力がはいらない。
いたるところKの刻印に爛れたが身体が、いま曝される、、、、