今までに何度も凸凹ラインを造ってるメンバーもいますが、コブ造りの経験が少ない人でもマチガ沢(や乗鞍大雪渓)で積極的にコブ掘りが出来るように、凸凹ラインの作り方を書いてみます。
◇使う道具
◆ピッチ紐
・どんなもの?
長さ約100mの細くて丈夫な糸(建築用の水糸)に、均等な間隔で目印が付けてあります。
・どんなピッチ?
我々が使っているピッチ紐は、3.2mピッチから3.4m,3.6m,3.8m,4.0mピッチまで、20cmごとに5本あります。
・どのピッチでコブラインを造るか
コブを新しく掘るに当たって、ピッチを幾つにするかは、そのラインを滑るであろう人々のレベルや嗜好によりますが、緩斜面~中斜面(マチガ沢では第1,第2stage)では、より多くの人が楽しめて練習になる3.8mもしくは4.0mピッチが良いでしょう。
第3,第4stageは中~急斜面なので、第1,第2stageと同じピッチでは、1コブの落差が大きいとスピードが出過ぎてしまうので、3.4mか3.6mが良いでしょう。
◆笹ポールまたは木の枝
・細くて真っ直ぐな笹を、長さ60cmに揃えて、30本ほど用意してあります。
・現地調達も可
マチガ沢では雪渓上に落ちている木の枝でも代用できるし、第3,第4stageなら右岸側の土手に手頃な笹が豊富に生えていますから、アプローチ路を整備するための剪定鋏で切り出しましょう。
・長さは?
コブラインが完成するまではショートポールを挿したままにしたいので、出来れば雪の中に30~40cm挿し込みたいです。雪上に出ている部分も最低20cmは欲しいので、ポールの長さは50~60cmは必要です。
◆鉄筋棒orピノピノ棒&そこらに転がってる石
・何に使うの?
ショートポールを深く挿し込むための下穴を開けます。
・雪質によって使い分ける
軟らかい雪ならピノピノ棒に体重を乗せて、硬い雪なら鉄筋棒をハンマーorそこら辺に転がってる石で打ち込みます。ピノピノ棒は、先端から40cmの位置に青テープを巻いてあります。鉄筋棒の長さは丁度40cmなので、棒が全て埋まるまで打ち込みましょう。
◆60~90cmの棒orストック(伸縮式が便利)
後述の振り幅を決めたら、その振り幅の長さの木の棒orストックがあると便利です。なお、ストックはグリップの下からリングまでで、概ね全長マイナス15cmです。
◇ショートポールを打つ
◆ラインを掘る場所を決める
・長く使える場所に掘る
マチガ沢では、融雪に伴って、雪の中から岩や樹木が出てきたり、雪渓に穴が開いたり、両側の岸壁が近づいてきたりします。常に新しいラインを造れるくらいの人数が集まる訳ではないので、なるべく長く使える場所を見極めて掘りましょう。
・安全な位置に造る
マチガ沢には山ゆえの危険があります。雪崩や落石、雪渓の踏み抜きや両岸への激突などです。このような危険が少しでも少ない場所を選びましょう。
・レース組と共存できる位置に
雪は誰の物でもないし、ラインを確保するのは早い者勝ちではありますが、同じ雪渓で滑るのですから、レーサー達がポールをセットするであろうラインを遮ったり近づき過ぎないようにしたいものです。
・片斜面は避ける
左右どちらかが下がっている片斜面にコブラインを掘ると、なかなか均等なコブになりませんし、滑りに変な癖を付けてしまう可能性もあります。なるべく片斜面は避けましょう。
◆ショートポールを打つ
・ピッチ紐を張る
ラインを掘る場所が決まったら、スタート地点とゴールの間にピッチ紐を張ります。ゴールはピッチ紐の端部を板にアンカーして、上方へ延ばしていきます。
・ピッチ紐を真っ直ぐに張るには?
風があると、ピッチ紐を真っ直ぐ張る事は出来ません。一瞬でも風が止まっている間にピッチ紐を真っ直ぐに張って、すかさず紐の上に雪玉を置いて仮固定して、風に煽られて動かないようにします。無風が長く続く事は珍しいので、ポールを打ち終わるまで必ず雪玉は乗せておきましょう。雪玉を乗せるピッチは、おおむね3~4m、目印と目印の間に1個で良いでしょう。
・振り幅を決める
ショートポールは、目印の位置から60~90cm離して、ピッチ紐の左右に交互に打ちます。振り幅が少なめだと縦コブに、大きめだと回せる基礎系のコブに育ちます。コブラインのピッチとのバランスも大切です。ピッチが短いのに振り幅が大き過ぎると、非常に滑りにくいラインになって、肩や腰を回して板を無理に振る癖が付いてしまう事もあります。概ねですが、4.0mピッチなら振り幅90cm、3.8mで80cm、以下ピッチが20cm短くなるごとに振り幅も10cmずつ短くすると良いかもしれません。3.6mで70cm、3.4mで60cmですね。しかし、もっとピッチが短くなっても、振り幅は最低60cmは欲しいですね。振り幅を50cm以下にすると、コブというより、ただの高速ウェーブになってしまいますから。
・ショートポールのセット
ピッチ紐を真っ直ぐ張って振り幅を決めたら、いよいよショートポールをセットします。ピッチ紐の目印の位置から、振り幅の分だけ左右に離して、交互に下穴を開けてショートポールを挿し込みます。少人数だとコブが掘れるまで数日を要しますから、その間にショートポールが抜け落ちないように、深く下穴を開けてください(約40cm)。ピノピノ棒は青テープまで、鉄筋棒なら全て埋まるまで打ち込みましょう。
・ピッチ紐を仕舞う
全てのショートポールをセットし終えたら、ピッチ紐を糸巻きに巻き取ります。絡まってしまうと修復に丸1日かかるので、くれぐれも慎重に巻き取ってください。
◇いよいよコブ掘り
◆ライン上の掃除
・マチガ沢のゲレンデには木の枝や石が落ちているので、熊手やヒジキ棒を使ってライン上を掃除します。
石は雪崩で割れて鋭利なので、掃除しておかないとソールが傷むし、木の枝も取り除いておかないとコブが掘れてきません。
◆滑って掘る
・プルークで滑って掘る
最初はプルークスタンスで、雪を押しながら滑ります。板に溜まった雪は、ショートポールの直前まで押しましょう。滑りながら、ブーツをショートポールに当てるようなイメージですが、実際にブーツを当ててしまうとポールが倒れるので、ポールの直前まで雪を押してください。
・右ターンの角度を深めに&強めに押す
多くのスキーヤーは左脚が弱い傾向にあります。また、多くのスノーボーダーはレギュラースタンスで、トゥ側が弱い傾向にあります。どちらも右ターンです。何も意識せずにプルークで雪を押すと、どうしても左外脚は深く押せませんから、出来上がったコブが左右シンメトリーになりにくいのです。一般のゲレンデにあるコブを観察してみてください。右ターン(スキーヤーの左外脚でレギュラーボーダーのトゥ側)はターン弧も掘れ方も浅く、左ターン(スキーヤーの右外脚でレギュラーボーダーのヒール側)はターン弧も掘れ方も深い、というコブが大多数です。このままコブが育つと、左ターンはグインと深いターンで、右ターンはチョンと当てるだけ、みたいなコブになってしまいます。こんなコブを繰り返し滑っていると、スキーヤーもスノーボーダーも元々弱い右ターンが、更に弱くなってしまいます。なのでコブを掘る際は、スキーヤーは左脚は意識的に深く強く押して、スノーボーダーはトゥ側を強く深く押し込みましょう。そうする事で、コブは左右シンメトリーに育つし、弱い方のターンの強化も出来るので、まさに一石二鳥です。
・急停止の連続でコブを深くする
プルークでコブのラインが見えてきたら、急停止の連続でコブを深くしていきます。この時も
「右ターンは深く強く」を意識しましょう。
・掘れるまでは回して滑ろう
モーグルでも基礎でも、キチンと回せない選手には点数が出ません。縦に入りたい場合でも、掘れるまでは回して滑りましょう。本人の練習にもなるし、より多くの人が楽しめるコブになりますから、一挙両得です。
◆クワやスコップで掘る
・硬い部分はクワやスコップで補助
スキーヤーはプルークで、スノーボーダーは急停止の連続でコブを掘り始めると、おおよその滑走ラインが見えてきます。その滑走ライン上に硬い雪や氷があるのが分かりますので、そうした硬い部分はクワで砕く等して、滑って掘っているメンバーを援護しましょう。
・全体に硬い場合はクワやスコップで掘る
滑っても滑っても掘れてこないほど雪が硬い場合は、滑走ラインにクワとスコップを入れて積極的に掘ります。振り幅の大小にもよりますが、ショートポールにブーツを当てている時にトップがある位置が、概ね次のコブの入り口であり、滑走者がフォールラインを横切る位置でもあり、切り替えのポイントでもあります。この、コブの入り口から次のコブの入り口まで、半円を描くラインを想定して、クワやスコップで掘ってあげましょう。掘る深さは、実際のコブと同様に、ターン序盤から前半、中盤、後半、終盤と、少しずつ深くしていきます。実際の手順としては、クワで荒堀りして、スコップで雪を排出しながら均しますから、2人1組になると仕事が効率的です。
おまけ
なぜマチガ沢では左右均等なコブを造るのか?
https://youtu.be/Kn0k9EMdBkE
このラインには激しい左右差があり、コブの名手が揃っているはずの長野県のトップ選手達でさえも滑りに大きな左右差が見られます。その中で、男子1位の丸山貴雄選手と女子1位の春原優衣選手の2人だけは、ほとんど左右差の無い滑りをして、それぞれ2位を大きく引き離して断トツの高得点を獲得しています。ひどい左右差のあるラインでも左右差の無い滑りが出来る事を評価されたと見て良いでしょう。さらには、ほとんどの選手達には左右差ゆえのノッキング(右ターンでの暴走と左ターンでの急ブレーキの連続)も見られますが、貴雄と優衣は左右均等な滑りによってリズミカルかつ安定した滑りを見せています。ネームバリューだけではなく、誰が見ても納得できるジャッジですね。
一般のスキー場にあるコブラインは、左右均等ではないケースが多いです。その理由は、ほとんどのスキーヤーは左脚が弱くて、かつ不器用な傾向にあるからです。また、ほとんどのスノーボーダーはレギュラースタンス(左脚が前)ですが、たいていのスノーボーダーはトゥ側が弱くてヒール側が強いようです。このような傾向は、スキーでもスノーボードでも、コブ初心者からエキスパートまで、多かれ少なかれ有るのです。すなわち、次のような良からぬ公式が成り立ってしまいます。スキーヤーの左外脚=右ターン=スノーボーダー(レギュラースタンス)のトゥ側。つまり、ゲレンデにありがちなラインは、左脚が弱くて不器用なスキーヤーと、トゥ側が弱いスノーボーダーが合作したラインですから、右ターンはターン弧が縦になりがち、かつ掘れ方も浅くなってしまいます。逆に左ターンはターン弧も掘れ方も深くなります。こうして育ったコブラインの末路は、右ターンはチョンと当てるだけ、左ターンはグリン!と えぐり込むような左右不均等が激しいコブになってしまいます。こういう左右差のあるラインばかり滑っていると、スキーヤーもスノーボーダーも、元々苦手な右ターンは更に苦手になり、「左右差のある滑りが身体に染み付いてしまう」のです。
しかし、スキーでもスノーボードでも、左右均等なターンはリズミカルで美しい、とされています。(個人的にも同感です)。逆に左右差は、欠点として見られ、採点競技に於いては減点の対象になります。点数や称号には興味のない人にとっても、左ターンでは減速できるけど右ターンは暴走するようでは、滑れるのは緩斜面かつピッチの広い簡単なコブに限られてしまいます。
という訳で、コブ種目の点数を上げたい人にも、難易度の高いコブを滑れるようになりたい人にも、ターンを左右均等にする事は、とても重要な課題なのです。
しかしながら、一般のゲレンデにあるコブは、スキーヤー/スノーボーダーによる自主管理は難しいです。一般客はゲレンデにスコップは持ち込めないし、デラがけするのも限界があるからです。
数年前の軽井沢では、完璧な均一ピッチかつ左右均等なコブラインを造れていましたが、コブに関して無知かつ理解のないスキー場サイドの弾圧によって計画的なコブ造りが禁止され、今では左右不均等かつピッチもバラバラなラインが自然発生するだけです。パトロールとスクールが造るラインも左右不均等かつピッチもバラバラ、滑れば滑るほどコブが下手になる糞コブです。
ところがマチガ沢のコブは我々が自主管理できるので、完全に左右均等なラインに仕上げる事が可能です。左右不均等なラインで滑っていると滑りも左右不均等になりますが、左右均等なラインで滑ると左右均等なターンを身につけやすいのです。左右均等なターンを身体に覚え込ませると、やがては左右不均等なラインでも左右均等に滑れるようになります。ならない人もいる?かも?ですけどね(^^;)
ほとんどの滑走者が左右不均等なラインをラインなりに左右不均等に滑っている中で、左右均等かつリズミカルに滑れる人には、基礎スキーでもモーグルでも高い点数が出るのではないでしょうか。(基礎スキーについては、冒頭に貼ったYouTubeが証明してくれていますね)。自分は点数が欲しくてスキー/スノーボードをやってる訳じゃない、という人には興味のない話になってしまいますが、、、それでも左右均等でリズミカルなコブ滑りはカッコいい!と、個人的には思います。
夏の乗鞍大雪渓でも、一部の有志がラインを管理していますが、大雪渓の第1stageは誰でもバスで登って来られるため、滑り散らかして荒らすだけ荒らして帰る輩もいます。左右均等なラインを左右不均等に滑り散らかして帰るだけの奴は、何年たっても全く上手くなっていません。その点マチガ沢は分かっている人しか登って来られませんから、優良なラインをキープしやすいという利点?があります。スコップやデラがけでコブを整備してみると、コブの成り立ちや構造が見えてきます。コブというものを理解する事も、コブの上達に大きく役に立つはずです。
往復2~4時間の山登りをも良いトレーニングになると思えるヘンタイにしか理解できないヘンタイ達の楽園、それが谷川岳マチガ沢です。ヘンタイ達の楽園マチガ沢では、今後も完璧に左右シンメトリーなラインを造って、メンバーのコブ上達を目指したいと思います。


