サザンオールスターズといえば「夏」というイメージが強いが、それは長年かけて築き上げた大いなる「勘違い」である。そしてサザンを「湘南サウンド」などと言う輩に至っては完全なる「加山雄三」病である。

 サザンオールスターズは、1978年6月25日に『勝手にシンドバッド』でデビューした。ヒットチャートを上昇するようになったのが、8月頃だったので「夏」のイメージが浸透してしまったのだろう。そして歌詞に「茅ヶ崎」「湘南」「江ノ島」などの地名が登場するため湘南のイメージが付いたに違いない。実際にメンバーで「湘南出身」は茅ヶ崎生まれの桑田佳祐だけであり、湘南のバンドといわれる筋合いもないのだ。

 以前サザンはよく夏にアルバムを発売し、イメージは完全に「」「」「太陽」となったのだが、それは販売戦略上、意識的に行っていたのだと思う。世間が勝手に作ったイメージを逆手に取っていたのだ。桑田佳祐自身はサザンを(本質的に)夏バンドだとは思ってないに違いない。件の『勝手にシンドバッド』の歌詞を見ても、ORANGE RANGE のような脳天気でちょっとHなこと出来そうな、そんなワクワクした夏を表現してはいない。どちらかと言えば、すごくいい女を口説き落とせないだらしがない男、今の流行りになぞれば「電車男」のようなダメダメ男の悲哀を歌っている(まあ「電車男」は最後ハッピーエンドとなる分まだ救われてるが、桑田の歌詞に登場する男はたいがいフラれたまんまだ)。

 今年再発売されたCDシングルだって、夏に発売されたのは44枚中半分にも満たないし、その中で完全に「夏」を意識した作品はさらに数が少なくなる。今回の再発にあたってオリコン歴代3位の売り上げとなった『TSUNAMI』に至っては、1月発売なのに「夏に聴きたい曲」で上位に入ってしまう。この曲の歌詞に「夏」は登場するが、夏の思い出を回想する別の季節が背景にあるでしょ。

 夏に海へ行く→クルマで聴く音楽はサザンが無難か→湘南の海に行けば現地でもサザン→やっぱ夏はサザンだね・・・。いや、その勘違いも大いに結構だが、春に聴くサザン、秋に聴くサザン、冬に聴くサザン・・・その良さが分かってから、夏にサザンを聴けば、「夏=サザン」が幻想に過ぎないと初めて理解できると思うのだ。

 茅ヶ崎ライブに「HOTEL PACIFIC」があったように、今夏のROCK IN JAPANや秋以降のツアーで盛り上がるロック・チューンを2005年の1stシングルに持ってきた。ラジオで初OAされてから、この曲を20回以上聴いたが、この疾走感はさすが、といったところだ。この曲は謂わば「桑田佳祐的GS解釈」と言え、以前にも似たような曲は少なからず存在するため、「またか」といった否定的な意見も出そうだ。


裸の人間同士で行こうな
夢見る少年同士でいような


過激にRock And Rollしようか
それとも安住の道(road)へ行こうか


Wrestle!!

Mustle!!


燃えろよボイン
・・・

やらせてQueen


これら日本語、英語を織り交ぜた押韻が、これだけ重厚なサウンドに乗ってもヴォーカルが「死なない」適度な軽快さを生んでいる。

 サザンが27年もの間日本のポップス界に君臨しつづける要因は、桑田佳祐の才能に因るところが大きいのだが、今回も"Yammy"といった日本のロックではあまり使われない英語が登場したり、「我愛你(=I love you)」といった中国語まで担ぎ出してくるところが「飽きられない」理由のひとつだと思うのだ。

 サザン(桑田佳祐)というのは、実は変幻自在を繰り返して現在に至っている、日本では非常に稀有なバンドだ。今はそれがスタンダードになって「何でもアリ」になったからこそ、現在の所謂J-POPは存在しているし、この程度の楽曲は桑田佳祐なら当たり前、と過剰な期待をする輩には不満もあるだろう。この曲を聴いて私が思うことは、


 「ライブを楽しめ!」


ただそれだけだ。きっと桑田もそういう狙いで作ったに違いないのだから。


 そしてひとつだけ確信して言えることがある。


 ORANGE RANGE や Mr.Childen には

 『BOHBO No.5』は作れない。