
アーティスト: 桑田佳祐, 小倉博和
タイトル: 孤独の太陽
タイトルは、The Walker Brothers の In My Room(邦題が「孤独の太陽」)から取ってるんですかね。
ジャケットは桑田佳祐が赤い果実を手で止めていますが、よく見るとその果実には「SOLITUDE SOLEIL」(=孤独の太陽)と書かれています。果実以外はセピア色のモノトーン(?)で、太陽を手で止めて出来た「影(陰)」を表している、というのが私の勝手な解釈です。
漫画ドリーム
小倉博和が弾くハードなギターのストロークと桑田佳祐のブルース・ハープが強烈なインパクトを与えています。 Bob Dylan を意識したんですかね。
しゃアない節
こちらもフォーク・ロック調(テンポは遅めですが)で歌い方がよりディランっぽいですね。「~節」って、クレイジー・キャッツがよくタイトルにしてたので、その辺から影響もあるんでしょう。なんか「昭和」を感じます。
エロスで殺して(ROCK ON)
ブギー調のロック・ナンバーですが、歌詞に「調教美人」なんて出てくるところを見ると、SMの歌ですね。全体的にギターがカッコいいので、つい聴いてしまう1曲です。
僕のお父さん
タイトルに反して歌詞の内容は、John Lennon の「Mother」を彷彿させます。(「TOP OF THE POPS」に収録されているので)ここでは紹介しませんが、死んだ母親のことを歌ったラスト・ナンバーの「Journey」という曲と対でありセットであるということなのでしょう。これまた小倉博和のギターの上手さが光る1曲です。
話が逸れますが、実際に父親が死んだ時に桑田佳祐は、告別式で「ラブユー東京」(実は私が生まれた年のヒット曲)を歌ったと報じられました。何でも父親と風呂に入った時、当時新曲だったこの歌を歌い「うまい」と褒められ、「勘違いして今まで来てしまいました」みたいな泣かせるコメント付きで(誰もそれを勘違いだとは思わないでしょ)。しかも、しめっぽいことを嫌う父だからと、霊柩車に乗って「Vサイン」。その場に居なかったから何ですけど、「かえって涙を誘うんじゃないの、それ。」って思いました。
孤独の太陽
アルバムのタイトル・チューンですが、やはり暗い。けど隠れた名曲と言っていいんじゃないですか。
生きるには重過ぎた過去
誰かをいつも傷つけた
メロディが独立してるこの部分がなんとも物悲しくて好きなんですけど、自己反省なんですかね。ソロ作品の中で、重たい物(=サザン)を突き放したいという意思が感じられるのですが。
太陽が消えた街
泥臭いブルース調の曲で歌詞もまた泥臭い。「援助交際」とか「ブルセラ」とか「クスリ」とか、そんなキーワードが浮かびます。
貧乏ブルース
早口な歌詞まわしが Bob Dylan を彷彿させますが、曲調がロックでもあり、ファンクでもあり、よく分からないのですがとにかくカッコいいタイトな演奏になっています。歌詞は、サザンの「ニッポンのヒール」の流れを汲む社会風刺です。
アートが理屈を越えない世界 文化じゃ食えない貧乏ブルース
真面目に働きまともに収めりゃ 手元に残らぬ自由主義社会
政治マフィアとやくざ坊主の 脱税や免税にゃ腹が立つ
闇にて潤う共産社会 稼げど家なき貧乏ブルース
ってあたりがお気に入りです。
このアルバム全体に言えることは、冒頭でもふれた人生や社会における「陰」を反映させているということです。「楽しく明るいサザン」(あるいは1stソロアルバム)とは対極を為し、その面では期待はずれに感じたリスナーも多いでしょう。個人的にソロ活動の中では、あらゆるマテリアル(音楽・映像ソフトを含む)を通じても、本作がベスト・ワークだと思っています。
私にとって、このアルバムには「捨て」曲が1曲もない。最低、年に1度は引っ張り出して聴くアルバムなのです。